第十九話 温度差にはなかなかついていけません
「おまえ……舐めてるのかぁぁぁ!!!」
しまった!
ジャグナル君みたいな相手に丁寧に受け答えすると逆効果だと言うのを忘れていた!
忘れていたと言うかライア君の対応が身についてしまっていてうっかりしてしまった。
ライア君とジャグナル君は灼熱と極寒くらいな差があるからついていけない。
でも、ついていけないとか言っている場合じゃないけど。
俺の自律神経は保つだろうか……。
そんな事を考えていて、ふと意識を戻すとジャグナル君が凄い形相の顔で怒っている。
「それでは始め!」
俺が弁解する暇もないまま空気の読めないクライフ先生は実技開始を告げる。
本当にここは俺にとっての味方はいないのだろうか。
「くらえぇぇぇ!!!」
ジャグナル君は一気に俺に詰め寄ると右ストレートを繰り出す。
そのスピードはさすが戦士学校に通っているだけあって生身の人間にしては速い。
そして、何となくだけどジャグナル君はクラスの八割の方のリーダー的存在だと思っている。
そして、そうだと思えるだけの力量はあると思った。
しかし……
「よっ」
「な、なに!?」
今の俺にとっては避けるのは容易い。
グランドに来る前に詠唱で身体強化の魔法をかけてきたからだ。
いくら目立つ事を避ける為とは言え、殴られたり痛い目には遭いたくない。
俺が至った結論はここでジャグナル君に俺と関わるのを諦めてもらう事だ。
それに、特待生としてある程度の力を見せないと怪しまれるし退学になっても困る。
出来るだけ平和的解決をしたいけど……。
「このやろうぉぉぉ!!! ちょこまかと! 避けるんじゃねぇぇぇ!!!」
それは無理な話だ。
痛いと分かってて避けない馬鹿はいない。
身体強化したって痛いものは痛い。
筋肉が多いところはある程度防げるけど、顔面や急所は無理だ。
俺は左右、時に上体を反らしたり半身になったりしながらかわす。
「ジャグナル君、もうやめてくれない?」
「こしゃくな! 誰がやめるか!!」
ジャグナル君はやめる気配がない。
と言うより、火に油を注いでしまったようだ。
まぁそれに授業の一環だしな。
というかカリキュラムに問題がある。
……まぁそれは置いておいて、どう言えば感情を抑えてもらえたのか……でも、絡まれた時点で平和的な解決なったのを見た事も聞いた事もない気がする。
……仕方ない。
俺は覚悟を決めた。




