第一話 どうやら転生でした
「にぃに! 待って!」
「フラン気をつけろよ!」
俺が電車に引かれる直前で記憶が途絶え、次に意識を取り戻した習慣に巨人の女性の謎の言葉を聞き、抱きかかえられて人生を諦めて五年。
死んだと思った俺はその後も意識を取り戻し、その度に何やら様子が違う事に気づいた。
まず、俺。
俺は自分の状況を確認するとどうやら自分が小さくなっている事に気づいた。
最初は事故で全身麻痺、もしくは宇宙人に実験にされて全身動かないのだと思った。
しかし、宇宙人だと思った女性は俺におっぱいを飲ませるし女性の相方の男性も俺に微笑みかける。
宇宙人だったらそんな事しないだろう。
そして時間がたつにつれ動きやすくなる身体。
俺は頭の知識をフル活用した結果一つの考えが浮かんだ。
『俺は異世界に転生した』
のだと。
そう思い、周りの状況を観察していくと俺がこけて膝をケガをした時、俺におっぱいを与えていた女性……ここまでくると母親で良いだろう。
母親が俺の膝に手をかざし、
「×××××」
と言葉を発すると膝を温かい光が覆い、傷が治った。
その瞬間俺は歓喜した。
魔法のある異世界に転生したのだと。
しかし、転生したのはいいけどさすがに記憶があるまま女性……母さんになるんだけど、年相応の記憶も持つ俺が仕方がないとは言え、おっぱいを吸うのは刺激が強すぎた。
でも、本能には逆らえないし生きる為には必要な事だ……と自分の中でいい訳をした。
それから時間が経つにすれ、徐々に謎の言葉は自然と俺の脳内で理解できるように変換されるようになった。
そして、俺は前世の知識をフル活用し、ネット小説で読んだことが通用するか試し始めた。
まず、魔法の世界で重要なのは魔力。
俺はネット小説で読んだ通り、三歳になって身体が言う事を聞くようになったくらいから小さい時に限界まで魔力を使うと魔力量が増えるというネット小説の知識を信じて、両親に隠れて魔法の特訓に取り組み始めた。
まず、詠唱を使って魔法をしようと思ったけど詠唱の書いてある本が家に見つからなかった。
その為、俺は前世の知識から『イメージで魔法を発動する』つまり無詠唱を取り組み始める。
そして、これが案の定通用した。
俺が知っている限り、この世界はまだ科学と言ったようなものが存在しない。
おそらく『そうなるものだから神がそう決めているのだ』というような感じみたいだ。
まぁ魔法がある時点である程度はそうなのだろうけど、イメージで魔法を使える事からそうとも言えないだろう。
俺はネット小説を信じて行動した。
魔力量に関しても鍛える毎に増えているし間違いなくネット小説の知識が通じる。
そんなこんなで五年間魔法の訓練をして過ごしてきた。
そしてその五年間の間にいろいろあった。
その一つが妹が出来た事だ。
今俺を呼んでいるのが妹のフラン。
母さんに似て、茶色い髪の毛にウェーブがかかって瞳は青色。
かなり可愛い。
俺は前世で一人っ子だったから余計に嬉しいものだ。
でも時々前世の両親が気になる。
俺が死んでどうなったか。
でも、確認のしようもないしどうする事も出来ない。
だからこの第二の人生をしっかり生きる事が前世の親への恩返しになると思いこの世界で精一杯頑張る事に決めた。
「ライト! フランを頼むぞ!」
「分かってるよ、父さん!」
俺の視線の先に畑にいる大柄で髭も生えた毛むくじゃらの熊のような男性がいる。
この男性が俺の父さんだ。
そして、どうやらこの世界では俺の名前はライトらしい。
俺は最初にこの男性が父親だと知った時、自分の顔に絶望したけど、自分で動けるようになって自分の姿を鏡で見た時、母親似なのか茶色い髪に青い瞳、そして整った顔をみて心から狂喜乱舞した。
やっぱりある程度顔は重要だ。
それからより一層魔法の訓練にやる気が出た。
「今日も訓練するのぉ?」
フランが俺についてきながら俺に問いかけてくる。
「あぁ! 将来の為にね! 父さんと母さんには内緒だぞ?」
「うん!」
フランは満面の笑みで俺に答える。
俺は両親に魔法の訓練は内緒にしている。
というのも、俺の夢と化していた異世界の魔法学校で一番になって彼女作ってバラ色学園生活を……って思っていたけど我が家が貧乏だから、下手に魔法が出来ると分かって両親が無理をして学校に行かせようと思わせない為だ。
第二の親、無理はしてほしくないし前世で親孝行何もできずに死んだ親不孝だからせめてこの世界では……という思いもあう。
この世界は、かつて昔に勇者でなく賢者が邪神を封印したという事で魔法使いが圧倒的人気で、世間的にも地位が高い。
なので、魔法学校が圧倒的に人気でその分学費が高い。
この世界の通貨は世界共通で前世の価値にすると、
白金貨一枚……一億円。
金貨一枚……百万円。
銀貨一枚……一万円。
銅貨一枚……千円。
青銅貨一枚……百円。
と言った感じになっている。
ちなみに普通の魔法学校の一年間の学費は金貨三枚。
一流の王立魔法学校は一年間の学費が金貨十枚らしい。
なので、一般的に魔法学校に通う学生は貴族の子か、魔法使いとして有名なところで働いている子供、そしてごく一部のスカウトされた特待生らしい。
ちなみに俺がざっと見た感じの家の収入は一か月銀貨十五枚程度。
なので、学園生活は半分諦めている。
まぁでもだからと言って、せっかく憧れの異世界に転生したのだから努力はするつもりだ。
もう少ししたらアルバイト……いや、自分で何かで稼ごうと思っている。
ちなみにこの世界では学校を卒業する年齢である十三歳で前世で言う成人扱いになる。
身体の造りもそれに伴って前世と違いこの世界の年齢に沿って成長している。
だから、この世界の十三歳を前世の二十歳とすると学校に入学できるようになる十歳は前世の十六歳くらいだろうか?
すべてを前世の年齢に当てはめられないけどたぶんそれくらいだと思う。
「フラン、頑張る!」
「おう! 頑張ろうな!」
ちなみになぜフランに魔法を教えているかと言うと、将来変な男が寄り付かないための一種の護身術だ。
こんな可愛い妹を変な輩に渡すつもりはない。
「じゃあ、行くぞ!」
「うん!」
俺の夢のバラ色学園生活にはまだまだ障害が多いけどこれからだ。
俺はフランと一緒に森の中の空き地、秘密基地に向かって走った。