第十六話 食事と先輩
「さっ、ライア先輩食べましょう!」
学食は自分で好きな物を取るタイプの物でとりあえず見た目が前世で食べたのと同じような物、カレーっぽいもの、ラーメンっぽいもの、パスタっぽい物を取った。
戦士学校でみんなよく食べるからだろうか、炭水化物系の物が多い。
と言うかほぼ炭水化物系だ。
バイキングで料金払ってたら元取れないタイプだな。
それにしてもこの世界の料理は見た目も味も前世と同じようで助かる。
そして、俺は食道の真ん中あたり、そして後ろは壁ではなく人が通れる通路のようになっているあたりに腰をかけ、向かいにライア君を勧める。
「あっ、そこはーー」
「誰だ、おまえ」
振り返ると、頬に傷があり黒髪オールバックでガタイのいい人が立っていた。
いかにもあっち系の人のようだ。
どうしたらいい?
誰だと聞かれて名前を言う訳にはいかない。
そんな事をしたら舐めているのかと怒られてしまう。
「す、すいません!」
そうだ、とりあえずここは謝るしかない。
「おまえ、初めて見る顔だな」
「はい! 今日から入学させて頂きました!」
……なんだ?
このいかつい人、メッチャ俺を睨んでいるですけど。
俺何か変な事言ったか!?
……いや、至ってノーマルなはずだ。
「おまえがジャグナルが言ってた特待生か……特待生って言ってたから期待してたけどこんなに線の細い奴とはな」
ジャグナル君と知り合い!?
それは決して良くない情報だ。
なんとかやり過ごさないと……。
「いや〜なんで自分が特待生なんでしょうね? ははは」
『実は魔法使いなんです』とは言えない。
俺の目標である魔法学校に入って一番になって可愛い彼女作ってバラ色学園生活の為にも戦士学校で細々過ごし、お金を貯める方法を探らなければいけない。
「……でも、特待生って事は何かあるはず。試してみるか」
そう言っていかつい人は俺に迫ってくる。
えっ!? 回避できないイベント!?
いったいどこで……どこでフラグが立った!?
俺に選択肢があった場面なんてなかったぞ!?
「ベイル先輩!!」
俺があたふたしてパニクってるとライア君が叫ぶ。
どうやらこのいかつい人はベイル先輩と言うらしい。
「ライアか……俺の誘いに乗らなかったおまえがこいつを選んだのか?」
「……どうでしょう? 少なくとも気にはなってますね」
えっ……?
いったい二人の関係はどういう関係で?
……あっち系じゃなくてそっち系ですか!?
「ふん、面白い。おい、おまえ! いずれ手合わせする事になるだろう」
いや、あのそういうご関係でしたら俺は全然引くんですけど。
引くというかむしろそっちの方が助かるし……。
俺が心の中で思いながら立ち竦んでいるとライア君が手を引っ張り席から遠ざける。
「あの辺は先輩達の場所だから気をつけてね」
俺の手を引っ張りながらライア君が言う。
そうか、暗黙の了解みたいでだいたいの場所が決まってるのか。
そう言えば通学の電車も暗黙了解でだいたいいつもの場所にいつもの人が座ってたもんな。
それと同じような感じだろうな。
気をつけないと。
「ライア先輩、ありがとうございました!」
「どういたしまして」
「ベイル先輩とライア先輩の関係ってーー」
「ひ・み・つ! それより食べよう」
ライア先輩に連れて来られた先には一緒に来ていた二割の方々が騒動の中、食べ物を運んでくれてたみたいだ。
いつの間に……。
「いただきます!」
「「「いただきます!」」」
ライア先輩の声でみんな食事を始めた。
結局ライア先輩とベイル先輩の関係を教えてくれなかったな。
でも……。
考えるだけで戦慄が走る。
いつかはベイル先輩に誤解を解かないと。
俺はそんな事を考えながら食事を摂る。
味は前世と同じような味で違和感はない。
違和感があるのは……ライア先輩の食事。
パンにサラダにヨーグルト。
違和感がないって言ったらある意味ないけど、違和感がある。
俺は半日でこの先の学校生活に不安を覚えた。
と言うか不安以外に何もなかった。




