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第十三話 自己紹介

 「じゃぁ自己紹介を」


 えぇ!?

 クライフ先生は何事もなく事を進めようとしている。

 いや、俺絡まれたんですよ!?

 ……むしろこれはここでは普通なんだろうか?

うーん……。

 それに特待生で入ったのに普通のクラス……定員がどうとか言ってたし、もしかしたら最初から生徒が少なかったのかもしれない。

 かもしれないというはきっとそうだろう。


 「じ、自己紹介ですか?」

 「そうだ。名前も分からないと良い関係は築けないだろ?」


 いや、関係を築くどころかすでに絡まれてるんですけど!!

 この場合逆に名を名乗ったら逃げられなくなるんじゃないだろうか。


 「ほら、早く」


 くそ!

 早くじゃねぇ!

 でも、逃げたところで寮だし……もうこうなればヤケクソだチクショ!


 「スーラ村から来たライトと言います! 8歳です! 今日からこちらでお世話になります! 仲良くしてください!」


 俺はヤケクソだけど内容は至って普通に自己紹介し頭を下げた。


 「……」


 しばらくし頭を上げる。

 静まり返る教室。

 そりゃそうだろうな。

 さっき絡まれたばかりだし。

 これは休み時間は質問攻めじゃなくて呼び出し攻めに合うんだろうか。

 魔力は……うん、今日は何も使ってない。


 『パチパチ』


 俺が覚悟を決めていると、一人が拍手してくれた。

 俺が視線をそっちに向けると肩くらいまであるサラサラの黒髪に白い肌の中性的で大人しそうな生徒がいた。

 所謂二割の方に属するタイプだ。

 見た目はこのいかついヤンキーが集まる中たと天使に見えるな。

 ……って俺にはそんな趣味はない。

 そして俺だけじゃなく、ジャグナルっていう俺に絡んできた生徒やその他のヤンキー達も視線を向ける。


 「チッ、ライアの奴か」


 ジャグナルは舌打ちをして視線を外す。


 「僕はライア。よろしくね」

 「よ、よろしく」


 いきなりの挨拶に俺は戸惑いながらも答える。

 するとライアは立ち上がり俺の前まで歩いてきて手を出した。

 俺はそれに応えシェイクハンドする。

 あえて英語で思った事に意味にはない。


 「うん、キレイな手、仲良くなれそうだ。よろしくね」


 ライアはそう言って和かに微笑む。


 「よ、よろしく」


 俺はさっきから『よろしく』しか言ってない。

 と言うより『キレイな手』だから仲良くなれそうって意味!?

 思えば握手する必要なんてない。

 ……ある疑念が浮かぶ。

 前世で男子校だと所謂そっち系に目覚める人が出やすいらしいってのを聞いた事がある。

 ……俺はライアが微笑む顔に戦慄を覚えた。

 前門の虎後門の狼とはまさしくこの事だ。

 まさか、身を以て知る時が来るとは……。


 ……フラン、お兄ちゃんはいろんな意味でピンチです。


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