第百三十六話 影の翼のリーダー
「逃げずに一人で来たか」
俺の前に昨日見た男が現れる。
この前と同じような黒で統一された服だ。でも、なんだあの光は?
男の周りを円を描くように淡い光が覆っている。
闘気……? いや、違う。闘気は身体に纏まりつく光だ。なんだ……? でも、今は気にしても答えは分からない。
「もちろん。おまえに勝って、全部明らかにして罪を償ってもらう」
「ふん、生意気な奴だ。……まぁいい、それよりおまえは魔法を使うな?」
やっぱり魔法を使ったのがバレていたか。
俺は別に今更隠すつもりもないので無言で頷く。
「やっぱりそうか……。ならなんで魔法学園に行っていない?」
なんだ? なんでそんな事を聞いてくるんだ?
「そんな事どうだっていいだろ。俺は今の学校が楽しかったんだ。……でも、おまえがチェスター先輩を使って学校でいろいろするから……俺はおまえを許さない!」
楽しかった学校生活がベイル先輩が倒れて以降一転した。チェスター先輩ら二年が生徒に物を押し売ろうとしたり、意に沿わなかったら魔導具で脅したりと……。
こいつのせいで校内は荒れた。元々荒れてはいたけど、それは純粋に力を証明する為だった。でも、チェスター先輩らは違う。自分たちの利益を追求する為に……その黒幕はこいつだ。
そして、こいつの正体は……
「それにおまえは影の翼のリーダーだろ?」
「っ!?」
俺の言葉に男は反応を示す。
やっぱりドーラ君の言ってた事は当たってたんだ。昨日の事を話してる時に『去り際に見たけどよ、あの野郎の腕にあった黒い翼の入れ墨……あれたぶん影の翼のシンボルだと思うぞ』ってドーラ君が言っていた。その話は結局確めようがないからって流れたけど、俺はそれを聞いて話が繋がった。チェスター先輩を裏で操っていたのは影の翼で、そのリーダー。そして、この男の実力を考えるとリーダーと考えるのが普通だろう。
その辺はライア君も何か感づいたみたいな感じだったけど。
「……そこまで分かったか。ならもう話す事はない。いくぞ」




