第百三十三話 長い一日の終わり
「きっと大丈夫だよ。あのジャグナル君だよ? ライト君にやられても、ドーラ君にやられても不死身のように生き返ってきたんだから。今回もきっと笑って戻ってくるよ」
ライア君は場の空気を和ますように笑って俺たちに言う。
でも、ジャグナル君の容体は危険だというのは俺には分かる。俺は自意識過剰じゃないけど、前世の知識を使って魔法を使っているからこの世界の魔法使いとしてはかなりの使い手だと思う。
俺はあの時、ジャグナル君の身体の細胞を修復するようなイメージで、さらに魔力は流しこめるだけ流しこんだ。それなのにジャグナル君は見た目は回復したけど意識は戻らなかった。
つまりジャグナル君はあの一瞬で相当深刻なダメージを受けていたんだと思う。
だから、俺の魔法で身体は回復しても意識は戻らなかった……。
チェスター先輩も同じ魔導具でやられたけどもしかしたら魔導具対策で制服の下に防弾チョッキのような魔法を軽減する魔導具を着ていたのかもしれない。
これも予想でしかないけどあの魔法を食らっても意識があったのと、チェスター先輩の用心深さからあり得る話だ。
「どうだろうな……でも、魔法を食らってもジャグナルの野郎は見た目なんもなかったみたいじゃねぇか? あいつは不死身か?」
ゔっ、またしても……。
「ジャグナル、叫んだ、口の中、魔法、入った、中、燃えた」
「そうか! ジャグナルの野郎、口大きく開けて喋りやがるからだ! ったくよ!」
またしても、バルテル君の嘘くさい説明にドーラ君は納得した。
間違いないな。バルテル君も俺が魔法を使ったのを見ている。その上で俺の事を庇ってくれているんだ。
ありがとう……バルテル君、ライア君。
「……でも、ジャグナルの野郎早く意識を取り戻すといいな」
ドーラ君は突然真顔になって呟く。
そして、俺たち四人の中に重い空気が流れる。
「さあさあ! もう寝ようか! 明日も事情聴取あるんだし! 早く寝ないと明日もたないよ!」
空気を察知して無理矢理ライア君が話を切ってくれた。
それに「そうだな」と同意してドーラ君とバルテル君は寝る態勢にはいる。
そして俺もそれに合わせて寝る態勢に入る。
ライア君、バルテル君ありがとう。そして、たぶん何かを感じながらもあえてつっこまず流してくれたドーラ君もありがとう。
そして、ジャグナル君、ベイル先輩……明日俺が必ずこの事件に終止符を打ちます。
俺はみんなの顔を脳裏に浮かべ明日すべてに終止符を打つ事を決意して眠りについた。
こうして俺たちの長い一日は終わった。




