第百十六話 寮を抜け出しました
「やけに見回りが多いな」
俺たちはなんとか誰にも見つからず寮から抜け出す事に成功した。
そして、寮から外に抜け出してチェスター先輩らとの待ち合わせ場所に行く為に街中を移動していると、ジャグナル君が言うように寮から見回りにきた人たちや衛兵の見回りが多い。
街中にキョロキョロしながら歩く寮の人だと思われる人や衛兵がたくさんいる。
寮の人たちが衛兵に協力を仰いだのだろうか?
俺たちは衛兵さんに顔を覚えられているし厄介だな。
「まぁ、お世辞にも僕らの学校のガラは良くないし二年生の半分がいない状態となったら不安もあるだろうし寮から衛兵に協力を仰いだんじゃない?」
……やっぱり普通に見てもガラ悪いのか。
まぁ入学した時に思ってましたけど。
でも、それでいいのだろうか? 戦士学校の卒業生からは騎士になる人も多いだろうに。
「へっ、上等だ!」
えっ……? 何が?、
「ドーラ、意味、不明」
「ごちゃごちゃうるせぇ! どうせ今だけだろ? 自由に過ごせるのは! 卒業した後は嫌でも家の事や家に仕える者の事考えないといけねぇんだからよっ!」
……なんだかんだ言っても貴族の子供なんだな。まぁ長男じゃなくても次男や三男でも、家の名誉の為にちゃんと働くのだろう。俺には分からない貴族精神だな。
でも、貴族ってもっと悪いイメージだったけどこの世界は違うんだな。
見た目からしてあれなドーラ君が言うんだから。ちょっと意外だな。
「ん? ライト、なんか言いたそうな顔だな?」
「そ、そんな事ないよっ!」
俺は咄嗟に目線を右斜め四十五度上にズラしてとぼける。
やばいやばい。ドーラ君に『意外と真面目にしっかり将来の事考えてるんだね』なんて思ってる事がバレたら怒られそうだしライア君とか悪ノリして収拾がつかなくなりそうだ。
ここは勢いでごまかすしかない!
「それよりも先を急ごう!」
そして俺はまくし立てるように言葉を繋ぐのだった。




