プロローグ
俺はどこにでもいるような普通の高校生。
毎日7時半に家を出て、電車に乗って学校に行きそして家に帰る。
学校ではどちらかと言うと地味で目立たない方だ。
頭も中の下、顔も中の下。
そして、友達がいない訳じゃないけど特に深い仲ではない。
もちろん彼女なんていない。
まぁそんな俺の唯一の楽しみはネット小説を読むことだ。
『ファンタジーの世界』
それを読んでいる時が唯一俺が主役になれる時間。
ネット小説に描かれる主人公は強くてモテる。
今の俺と全く正反対だ。
俺はそれを読んでその空想の世界の主人公を自分に置き換えている。
多少……いや、だいぶイタイ奴だとは自分でも思っている。
しかし、そんな空想の世界に俺は憧れ、もし生まれ変わるならそんな世界に生まれたいと思っている。
「さて、続きを読むか」
俺は学校の帰り道で一人呟きスマホを操作する。
今読んでいるのは簡単に言うと主人公が異世界に転生して小さい時から魔法を訓練し、すごい力を得て魔法学校でモテまくるという話だ。
俺はスマホを操作しながら家に帰る為、電車に乗ろうと駅のホームを歩く。
「っ!?」
俺は一瞬何が起きたか分からなかった。
「いたたた。あれ?」
なぜが俺の目の前はスマホの画面ではなく線路がある。
「危ない!!」
「きゃあああああ!!!」
危ないと叫ぶ声や悲鳴が聞こえる中、俺はスマホを探そうとした。
すると、顔を上げた瞬間、電車が目の前に来ていた。
そして次の瞬間、俺の目の前は真っ白になった――。
――――――――――
どれくらい寝ただろう。
俺が目を開けると、目の前に写るは木の天井だった。
なんで木の天井? 病院って白い天井じゃないっけ?
俺が気を失う直前に見た光景は電車に引かれようとするところだった。
急ブレーキをかけている様子だったけど間に合っていなさそうだったし、生きているなら病院だと思うけど……。
俺は周囲の状況を確認しようと体を動かそうとしたけど、身体が言う事を聞かない。
すると、目の前に巨大な顔が出てきた。
一見して20代半ばの女性。
瞳は青で茶色のウェーブの髪。
見た目はキレイだけど着ている服は少しぼろい。
ここはどこ!? いったい何!?
「×××××?」
何やら聞き覚えのない声を発している。
「××××××」
目の前の女性は分からない言葉を発すると、俺を抱き上げた。
その途端、俺は睡魔に襲われる。
もしかして電車に引かれる直前に宇宙人にでも攫われたのだろうか?
分からないけど、殺されたり実験されるなら意識がない方が良い。
俺は睡魔に抗わず、人生を諦め眠りについた。