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00:00に予約投稿しておこうとは思ってるんですけどその前によく寝落ちてますすみません……。


この話から長とリィの二人を便宜上二人、と書いております。書きたくはなかったのですが、流石に無理でした…然りとて二匹も無理があり……という感じです。

「僕は悪くない」


薄暗い、最低限しか家具のない殺風景な部屋の中で、一人の男性が床にうずくまっていた。床の木目に向けられた瞳だけがギラギラと輝き、やつれ隈の浮かぶ彼の顔で異彩を放っている。


「僕の所為じゃない。……ユリが魔術をつかえないのが悪いんだ。――そうだ、僕は何も悪くない、あいつが悪い」


ぶつぶつと小さな声で呟き続ける。それはまるで、呪詛のような、恨めし気な響きを伴っていた。突然、ドアがノックされ、部屋の外から声がかけられる。


「パパ?ご飯、食べよ?」

「…………」

「……パパぁ。――――ご飯、ここに置いておくね」


ためらいがちな、悲しげな娘の声にも男は何の反応も見せなかった。ただ、暗い声音で呟くのみだった。


「そうだよ、あの時死んでおけばよかったんだ。それが、みんなの幸せだったんだ。あいつが生きていたのが、そもそもの間違いだったんだ――――」



「サツキ、どうだった?パパの様子は」


父にご飯を持って行ったあと、リビングに戻ってきたサツキは母親の質問に首を振った。


「全然ダメ。ユリの部屋に閉じこもってまったく反応なし」

「そう……」


母親は疲れた顔をして、ソファに倒れこんだ。サツキはその隣に腰かけた。


「なんでユリは急にあんな……ひどいことを言い出したのかしら」


目を手で覆って母親は言った。悲しそうな声音だった。サツキは何も言えなかった。

部屋に沈黙が訪れる。――――と、母親は小さくおえつを漏らした。


(ママは、事あるごとに泣き出す)


その様子を、サツキは黙って冷めた目で見つめていた。

泣けば優しくしてもらえる。弱ければ許してもらえる。母親のそういった無意識下の賢しさが、サツキは嫌いだった。その、か弱さを前面に押し出し、強調する泣き方が。慰めを娘にも無自覚に強要する(したたか)さが。


(まあ私にもそういう部分はいっぱいあるんだろうけど)


しかし、困った。サツキは周りを見渡した。今まではストレスをユリにぶつけて晴らしていたけど、今はもうユリはいない。


(早く、学園に行って、もう一度お姉ちゃんに会いたいなぁ)



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



リィと長が盟友の里に来て、4日目の朝が来た。二人は、とある四人家族の一室を借りて日々を過ごしている。


『リィ、起きたか』

『もう起きたよ長。お早う』


まだ朝早く、ようやく日の光が地平線の端から見えるか、という明け方。二人はいつものように二人からなるように丸くなって寝ていた床から身体を起こした。二人にはきちんとベッドも用意されていたのだが、落ち着かないという理由で使っていなかったのである。


『魔石はもうできているか?』


窓の方を見つめながら長は聞いた。満月の夜、一晩その月明かりに照らされることで、魔石は完成するのである。


『んー、無事にできてるみたいだよ』


リィは窓の脇に置いておいた器の中を覗き込みながら言った。その中に、魔石の材料となる髪やその他諸々を入れておいたのだ。前日まではバラバラの素材であったその中身は、今は深い藍色に輝く拳大の魔石となっている。


『ほう、今回は藍色か』

『毎回思うんだけれども、色の違いってどうしてできるんだ?』

『それを発見したらお前は』

[おはよーございますぅ!!]


リィと長が話していると、勢いよく扉が開いた。そして、部屋に飛び込んできたのは、泊まらせてもらっている家の娘のコルシアだった。


『あぁ、食事かな?お早うコルシア』

[そうなんです!呼びに来たんですよぉ!!えへへー]


コルシアがにへらと笑んだ。


[だから、早く降りてきてくださいねぇ!]

『了解した』


パタパタとこれまた勢いよく階下へ降りていくコルシアの後をリィは少し遅れて付いていった。長は、しばらく身じろぎもせずリィが出ていった扉を見つめていた。


『……リィ。濃い色の魔石を作ることが、どんなに珍しく、またとんでもないことなのか、お前は知らなんだな』


ポツリ、長は呟く。魔石が、日光を反射してキラリと光った。

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