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『久方ぶりだな』


上機嫌に尾を揺らす長の隣で、リィは辺りをキョロキョロと見渡していた。

巨大な魔樹木のそびえ立つ小島を中心に泉があり、さらにその周りを白い石造りの建物が取り囲む。家々の間には水路があり、いつでも水と触れ合うことができる開放的な街。街の外を茨がぐるりと覆い、壁の役割を果たしている。



リィと長は今、盟友の里に来ていた。


[よく来た、盟友]


耳長族の里長が長に挨拶をする。その後ろにはたくさんの住人がちらりほらりと何かしらの影から顔をのぞかせている。


[リィ、といったか?貴殿もよく来たな。貴殿と顔をあわせることができて嬉しく思う]


里長の、歌のような耳長族独特の声が響く。リィは里長を軽く抱きしめた。

里長もリィを抱き返す。すると里のあちこちから歓声が上がり、里の住人があちらこちらからやってきた。リィは、耳長族の盟友だと認められたのだ。


[して、何用で来た。それに、群れはどうしたのか?]


里長は不思議そうに聞いた。

群れ。リィはその言葉にびくりと震えた。長と再会した時から幾度も考え、そして見ないふりをしてきた言葉だった。群れの長だった長が一匹で自分のところに来て、一匹だけで自分と行動する意味。一度も仲間の所へ行くそぶりすら見せないその姿を、リィは努めて何も考えないようにしていた。


『……群れは』


長は重く暗い口調で話し出した。耳と尾が、所在なさげにピクピク、ゆらゆらと揺れる。


『群れは四年前、壊滅状態に陥った。残ったのは俺と、いく匹かだけだ。もう、10匹にも満たない数しか残っていなかった。故に、俺は若い衆が子を身籠るのを見届けた後、群れを別の奴に任せて、抜けた』


もう俺等の時代は終わった。そう長は笑った。哀しい顔で、自分を責めるように、嗤った。

リィは気付いた。四年前という、その言葉の意味を。群れが無くなってしまったその理由に。

自分のせいだ。

リィは小さく喘いだ。先ほどまで物珍しく、色鮮やかに映っていたはずの里の景色が、急速に色褪せていくように感じた。


『俺の、所為か』


たまらずリィは聞いた。自分を可愛がってくれた兄貴姉貴分が、同じように育った、自分も慈しんでいた弟妹分が。死んでしまったかもしれない。いや、きっと大半が死んでしまった。自分の所為で。


『お前の所為じゃねぇよ』


青い顔をして、尻尾を腹の下に巻いてしまったリィに、長はきっぱりと否定した。


『でも、』

『死んだのは誰のせいでもない。彼奴らの命はあの時尽きる定めだった、それだけのことだ』


それに、と長は続ける。揺れるリィの瞳を捕まえるように、しっかりと見つめながら。


『彼奴らは最後までお前を、群れの子供のことを心配していた。其奴らを守って死ねるならそれほど嬉しいことはない、と常々言っていた。出来ることなら、唯一毛皮を持たないお前に死んだ後毛皮をあげたい、とも言っていた』


そう言った長は、空間魔法の中から黒い毛皮を出した。何枚もの毛皮が、真っ黒い艶やかな毛皮が、空間魔法の中から出てくる。

(こんなに、みんなが)

その毛皮の持ち主だった仲間には、もうお別れすら言えないのだ。リィは胸がぎゅうと締め付けられたような気持ちがした。


誤字脱字等何かございましたら、お手数をおかけしますが御一報くださいますようお願いいたします。




読んでくださる方、ブックマークをしてくださる方。一話投稿するごとに、少しずつ読んでくださる方が増えてきているみたいで、感無量です。もともと、書き上げるためのモチベ維持のためになろうさんに投稿させていただいたのですが、思ったより多くの方に読んでいただけて、嬉しく思います。この場でお礼を申し上げたいと思います。

ありがとうございます。本当にありがとうございます。

そして、お話はまだまだ序盤ですので、これからもお付き合いいただけたら嬉しいです。


あと、これはちょっとした疑問なんですが、登場人物設定等あった方が、読んでくださってる方にとって読みやすいんでしょうか?

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