報せ
長男・時臣が廃嫡されてから三ヶ月が過ぎた。
だが龍堂の三兄弟は誰も自分から動き出す気配はない。
出来れば争いは避けたいのだ。家臣を集めてどうすべきかの話し合いがそれぞれの城で行われていた。
次男則之の久能城内では、順当に行けば次期当主となるのは則之なのだから、理を説いて話し合うべきだ、いや打って出てここで年長者の力をみせつけるべきだ、と二派が真っ向からぶつかりあっていた。
片や四男繁則の小椋山城では、則之か高時の勝った方に従うのがいい、兄弟なのだから争わずに年長者に従うのが一番良いのではないかとの意見に纏まりつつあった。
そして満願寺城の三男高時。
出来れば兄弟で相争うような無駄なことはしたくない。かと言って自分から誰かに折れるつもりもない。
これは大きな好機であるといえる。
本来ならば兄の手足となってどこぞの戦だと駆けずり回るか人質としてどこかに送られるしかない三男が、この駿河国の領主になれるまたとない機会なのだから。
その互いの膠着状態を破ったのは急激に冷え込んだ日に舞い込んだ一つの報せからだった。
雪でも舞い落ちて来そうな、凛と冷え切った夜、その報せはもたらされた。