逆ハーレムも面白そうね
放課後。
ユーマが、私が指定した校舎裏までやってきた。
「ローズマリーは?」
「あいつ、今日は宿題が沢山あるからと言って先に帰った」
「好都合ね」
「ミント、お前はどうなんだ? 宿題」
「愚問ね。この才女である私が、そんな宿題程度で手古摺る(てこずる)と思っているのかしら」
ユーマに自信満々に告げる私だが……実は、内情は少々違っていたりする。
まず宿題という問題集だが、面倒臭いなと思いつつそれを開くと、宿題分が全てが解かれていた。
試しにぱらぱらとめくると、その問題集は全てが解かれていた。
しかも最後に簡単すぎますわ、と書かれている。
更に今日たまたま小テストがあり、暗記系の問題が出たわけだが、
「な、何これ、手が勝手に動く?」
もう覚えていないような暗記問題が次々と解かれていく光景を私は目の当たりにした。
才色兼備設定が確かにあったのだが、この体、ハイスペック過ぎ! とある意味感動しつつ私は、これでローズマリー達の恋のお手伝いに専念できると気付く。
といったこちらの内情はもちろん話さない私だが、そこでユーマが、
「本当に俺の恋を応援してくれるのか?」
「そこは私にとってどうでもいいわ、正直に言うとね。それよりも貴方が私の言う事を信じて、動いてくれるかどうかが私には重要なの」
「……もしもミントを信じないと言ったらどうするんだ?」
そう問いかけてくるユーマに私は、次の攻略しやすそうな候補は誰だっけと攻略本を取り出しながら、
「……昼間あった腹黒生徒会長かしら。会って話すと喧嘩になりそうだけれど、まあ、目的のためには仕方がないわね」
「……ミント、お前の目的はなんだ」
「誰でも良いからローズマリーと恋人同士にさせる事。ただ好感度を持つ相手が特定されているから、貴方も含めて誰か、もしくは逆ハーレムに持っていくのも手なんだけれど……」
そこまで呟いて私は考える。
とりあえず誰かとくっつけてそうすればようやく私は、人生イージーモードかつ青春を謳歌する自由が手に入るわけで……特定するよりも片っ端から好感度を上げて行くのも手ではないのか?
しかもローズマリーという主人公を逆ハーレムに出来るという、はたから見ると現実味のない面白展開かつ、全てのキャラとの恋愛イベントが真近で見れるわけで、
「逆ハーレムも面白そうね」
「や、止めろ、ローズマリーを他の男と分け合うなんて嫌だ!」
「だったら素直に私の言う事を聞きなさい。特に明日は、フラグずくしなんだし」
「フラグって……そんなに色々な男があいつに?」
「ええ、しかも明後日は土曜日で学校が休み。なので何処かに遊びに行こうと誘ってくる男性キャラもいるかも」
「キャラっていうなよ。そうか……ミント、お前にとってこれはゲーム感覚なんだな?」
「え? 違うわよ。私自身、ローズマリーの親友に収まりたいから恋人候補のお手伝いをしているだけ」
「……分かった。それで明日はどうすればいい?」
「寝坊せずにローズマリーと一緒に登校しなさい。でないと寝とられるわよ」
「寝と……、分かった。他の奴が接触してくるんだな?」
「そうよ、寝坊した貴方を待っていて、少しいつもより遅く出たローズマリーが接触するの」
「……目覚ましを三個ほど付けておく」
とりあえずは続きは明日の朝になった。
理由は一つずつ指示しないとユーマが混乱するからだ。
そこで私も先ほどのユーマの言葉を思い出して嘆息する。
「ユーマが言うようなゲーム感覚とは私には程遠い」
むしろ死活問題なのよね、と私は思ったのだった。