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私は色々割り切った

 そういえば私、ユーマが不安に思うような事しかしていないような気がするわ、と気付いた。

 もっとも気付いた所で何を言おうが、それこそ微笑もうがユーマには怖くて仕方がないかもしれない。

 それが悪役ヒロインの宿命のようなものだと私はすぐに諦めた。


 そんなわけで授業を受けている私は、先ほどの食事の光景を思い出していた。

 もぐもぐと食事をしていた私はさりげなくローズマリーに聞いてみる。


「ローズマリーさん、貴方の趣味は何ですの?」

「えっと、私は縫いぐるみを作る事です」

「そうなの。じゃあ今度私に縫いぐるみの作り方を教えてもらえないかしら」

「あ、あの、私でよろしければ」


 顔を赤くして、恥ずかしそうに言うローズマリー。

 こんな可愛い子をいじめて何をやっているんだろうと思いつつ、そういうキャラ設定だから仕方がないわねと割り切った。

 これで上手く仲良くなれればそれで私は構わないのだ。


 確かに縫いぐるみが上手く作れるのは魅力的だ。

 そして時間がかかるから教えてもらうという口実で、仲良くなる切掛けを得られるのである。

 攻略本、本当に頼りになるわ……趣味まで登場人物のプロフィールに書いてあるし。


 とはいえ実益を兼ねての縫いぐるみ作りだが、それは私自身にもとても魅力的だった。

 以前作った猫のぬいぐるみは、持っていると近所の子が泣き出すくらい怖くて尻尾がなぜか3本になっていた。

 その内化けて出てくるんじゃないか、とあいつに言われたのだけれど……。


――あいつって誰だっけ。


 ふと疑問に思うが、その“あいつ”が私には思い出せない。

 だいたい、本物の猫だったら妖怪か何かにいなるかもしれないが、縫いぐるみ、それも私が情熱を込めて作ったものに対してそれは酷いのではないか、と思わなくはない。

 そもそも私は……と思った所で背後で誰かに当たった。


「うわっ」

「あっ、ごめんなさい……あら、貴方は」


 そこにいたのは、ローズマリーを呼んで来てもらった、ローズマリーと同じクラスのモブなはずだ。

 美少女ゲームの主人公のように、無個性というか、髪で目の部分が隠れている黒髪の少年だが、何だか彼が私には気になってしまう。

 そこで彼は丁度食べ終わったらしく、私に失礼しますと言って、そそくさとその場を去っていく。


 怪しい。とても怪しい。

 女の直感で私は彼に何かを感じ取る。

 けれど今はローズマリー達と交友を深める方が大切だ。

 なので再びローズマリーに、


「私はお菓子作りが趣味なんです。縫いぐるみを教えてもらう代わりに、お菓子作りをお教えしましょうか?」

「本当ですか! 嬉しい!」


 食いついた彼女に、よし、上手くいったと私は思う。

 けれどそこでユーマが死にそうな顔で、


「やめろ、止めてくれローズマリー」

「ユーマ、だってミントさんが教えてくれるのであれば私だって普通に美味しいお菓子が作れるかもしれないんだよ?」

「いつもいつもいつもいつも試食させられて死にそうになっていた俺に、何か言う事は無いのか?」

「大丈夫だよきっと」

「いや、もうあんな思いをするのは嫌だ」


 そうユーマが悲しげに呟く。

 そういえば、ローズマリーにはメシマズ属性があったなと思い出しながら私は、


「そうね。そのユーマ君が負けを認めるくらい美味しいお菓子を作りましょうね、ローズマリー」

「はい! ミントさん!」

「やめてぇえええええ」


 悲鳴を上げるユーマを無視して私達は約束を交わした。

 そして二人っきりになった時にユーマに、放課後少し残ってもらう事にしたのだ。

 だって放課後にイベントがない日は限られているのだから。


「さてと、またがんばってみますか」


 私が人生イージーモードに過ごすために!

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