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しっているし

 屋上に呼んできたユーマとカモミールだが、私のお願いを素直に聞いてくれた。

 カモミールはミントを敵視していたはずなのだが素直に、モブである蒼一兄ちゃんに触れられてくれていた。

 ミントがもう一人いたので何かを諦めたのかもしれない。

 そして、カモミールもまたはっとしたような顔で、


「蒼一……私、何をやっていたのかしら」

「まあまあ、妹の心ちゃんを大事にして悪役ミントから守ろうとしていたのは分かるし」

「というかもう、強制ログアウトを起動させなさいよ!」

「いや、でも心ちゃんの痴情のもつれは気の毒で」

「相変わらず蒼一は甘いわね。全く心がまさかこんな事をするなんて思わなかったわ」


 怒りだすカモミールこと花。

 そんな花をあやすように、蒼一が宥めている。

 それをユーマが何を言っているのだろうと置いてきぼりのような顔で見ているが、花や蒼一、心という言葉に覚えがあったのか、


「え、えっと……何処かで聞いた気がする名前だ。何処だったかな」


 そんな悩みだすユーマに蒼一は近づき、 


「すぐに意味が分かると思うのでちょっと触らせて下さいね」

「わっ! なにをする……」


 そこで騒ぐ花から逃げるように蒼一がユーマのお腹の辺りに触れて、瞳が濁った。

 

「……ちょっと待て、何で心はそんな事をやっているんだ?」


 色々と思いだしたらしいユーマ――祐が目を更にどんよりさせて呟いた。

 そう言えば現実世界でもこの祐は実は、心に気があるような様子が見られていたと私は思いだした。

 それを二間に魔観察するのも私の趣味だったのだが、この状態だと、心が逆ハーレムを何度も作りあげたのを見ているはずだ。

 それで心に幻滅するのは良くないと私は思ったので、


「わーい、祐が正気に戻った」


 ちょっとからかってみる事にした。

 けれどそんな私を祐は見て、低く笑った。


「……由紀、散々な目に合わせてくれたな。後で覚えていろよ」

「えー、私は普通にお手伝いしただけなのに」

「脅したりなんだったりしてな。ああそうだとも、後でお前の分も手伝ってやる。兄さんも含めてな」


 恨めしそうに私は言われて、何故陸も関係しているんだろうと思うが、そんな黒い笑いを浮かべる祐に珍しく陸が焦っている。

 そう言えば陸と祐の兄弟は、兄である陸の方が優秀だった気がする。

 そのままこのユーマとミナトの関係にあてはめられそうだ。


「何を手伝うっていうの? というか陸に関係がある何かって、私は思い当たらないんだけれど」

「そうかそうか、思い当たらないか。それは都合が良いな。……今まで俺の繊細な恋心をぐりぐりしてくれた分、たっぷりお礼も兼ねてぐりぐりしてやる」


 ちょっとやりすぎたけれど、手伝われるような弱みがあったかなと私が考えながらついでに一言。


「それで祐、心には本当は今回のゲームで祐との距離を縮めたいと思っていたの」

「……嘘だ」

「逆ハーレムになったのは何か理由があると思う。だから、心の話をいい訳も含めて怒らないで聞いてあげてね?」

「……別に逆ハーレムで怒っているわけじゃないし。……いつもゲームで俺ばっかり見ていたのもしっているし」


 小さな声でもごもごと祐は言う。

 そうか、ちゃんと分かっているんだと、その点に私は安堵しているとそこで、


「皆で集まっていると思ったら……排除したと思ったのに」


 そう、屋上にローズマリー……心が現れたのだった。


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