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複線回収圧縮モード

 これまでの出来事の改装を終了した私は、現在、ローズマリー以外のキャラと接触する事になる。

 正確にはローズマリーを手助け出来ないようにさせるためだと蒼一は私に言うが、


「そもそもそんなで防げないような必殺技があるのに。それにユーマ……祐と心ちゃんは今回はくっつきそうだから放っておけばいいのに」

「念には念をね。本当は今まで強制的にローズマリーのみをログアウトさせる書類のいらない方法があったのだけれど、その全てを攻略対象キャラや、ミントになった美奈ちゃんに邪魔されてね、仕方がないんだ」

「ふーん。でもせっかく私がユーマルートになるようにけしかけたり色々裏で糸を引いたのに、意味なかったみたい。無理やり連れ戻すなら、ルートに入らなくても良かったかも」


 それが未だに悔しいが、心ちゃんの複雑な気持ちが分からない私ではないので少しくらいは楽しい思いが出来ているといいなと思う。

 そこで蒼一が、


「でも何で由紀ちゃんはユーマルートにはいるよう手伝っていたんだ?」

「だって悪役だから、もしも異世界だったならここに残らないといけないから、正義側のヒロインの腰巾着になって良い人になりつつ、振られたイケメンをゲットしたりして、主人公の幸運?のおこぼれを預かりつつ人生イージーモードでやっていこうかなと」

「……由紀個性が強すぎて腰巾着のイエスマンは無理だと思う」

「何よ! 私だってやろうと思えばできるんだから!」

「はいはい、それで何でユーマルートを選んだんだ?」

「一緒に登下校するだけで落ちるくらいチョロい男だったから」

「……そうなんだよね。そういったキャラの設定だったから、祐にはそのキャラを進めたのに……何で逆ハーレムエンドばかり選びだすのだか。おかげでローズマリーが気に入らないエンドだから、タイトル画面に何度も戻る羽目になるし」


 そんな素敵な無限ループという名の全ての関係性のリセット。

 そこで私は気づいた。


「良くゲームにあるような、途中からとかいったセーブは出来ないの?」

「まだ初期のテストプレイだから、それを作っていないんだ。だから初めからになって、その世界に長時間いるとよりそのキャラに馴染みやすくなるから、ローズマリーの願いによる支配も強くなって、かつ、その前の回の失敗の記憶を引き継げずに同じ失敗の行動を繰り返してしまうんだ。実際に長くいると支配が強くなるのも含めて、この世界に馴染んでしまうと認識できなくなるけれど、こまめに夕方になったらすぐに朝になるように時間を早送りしたでしょう?」

「そうなんだ……そう言えばミントになっていた美奈に、次郎であるサトルが花束を持ってきたと惚気られた時、ミントになった美奈は一晩中惚気ていたと思っていたみたいだから、確かにそう認識していたのかも」

「そうそう。長くいるとキャラとしての行動や記憶があると思ってしまうんだ。実際は個人個人にしか見えない電子画面のようなものがあってそこに色々と情報が書き連ねられているのだけれど、それを自分達の“記憶”としてゲーム内では認識してしまうんだよね」


 それで私の知らない過去キャラの記憶が、皆には共有されていたらしい。

 でもそういった言動や誘導される行動があったとして、私は疑問を覚える。


「あれ、でもミントになった美奈は?」


 確か妙な行動をとっていたらしいのだが、そこで蒼一は、


「ミントはそういった悪役を演じているけれど実際はそうじゃないという“矛盾”を孕んだキャラクターだから、その場を引っかき回す性質を持っていた。でもそれでも悪役と定められているしそうしないとユーマとのフラグが立たないから、結果として、悪役になるように認識されてしまう」

「確かに自分を変えたいからと、分裂した私を、ミントになった美奈は観察していたわね」

「そう。そしておそらくはユーマとの仲を取り持とうとしているとローズマリーは感じ取っていたのかもしれない。だから悪役を押しつけられず、由紀であるミントの存在を許容していたのかも」


 どうやら私がユーマルートを選んだのが功を奏したようだ。

 ユーマ以外のキャラと時々くっつければ良かったとか逆ハーレムにした方が楽だったんじゃないかという私の思いは全て、バッドエンドに通じていたらしい。

 そんな事を思いつつ私は、


「だから初め、蒼一兄ちゃんは逃げるような感じだったのかな? でも頬を赤らめていたような……」

「ミントのキャラは僕好みなんだよ! でも追いかけ回されて、物凄く怖かったし、やっぱりミントは僕の邪魔になるから危険だと思って、初めはローズマリーに気付かれたらまずいけれどと思いつつ、定点移動を使ってその場から脱出したんだ。幸い気付かれなかったけれどね」

「でも、やっぱり追いかけて良かったじゃん。普通のモブじゃないって思えたし。顔写真からは分からなかったけれど。……でもどうしてだろう?」

「初めに施したローズマリーの影響を受けにくくなる措置と、ここはローズマリーの領域である学校だから邪魔されて連絡は取れないけれど、繋がる何か信号のようなものを感じ取ったのかも」

「うーん、行動が怪しかったからじゃない?」

「その程度の行動がおかしいと“認識”出来る事が、ゲームのキャラとしてはおかしいともっと早くに僕はくづくべきだったかな」

「それに私の美貌にころっと落ちなかったのも怪しいし。攻略対象の男性やローズマリー、カモミールは私の美貌に落ちないから、モブなのに変だとも思ったんだよね。やっぱり人格があるからなんじゃないかな」


 そんな期待を込めて私が呟くと蒼一は呻いてから、


「そうであって欲しいけれど、多分違う。もともとそんな簡単に落ちたら、恋愛ものという話にならないから。ただのミント逆ハーレムで大勝利で終わってしまう」

「でもみんな、私が“由紀”に似ていると言っていたよ?」


 それに蒼一は驚いた顔をして、


「何人もが言っていたのか? ……やはり、ゲームの偽の記憶では本人の人格を塗りつぶせないのか。そんな風に他にキャラクターに何か違和感がなかったか?」


 蒼一が目を輝かせて私に問いかけるので私は、


「そうだね……一番違和感が強かったのは、ミナト……陸かな?」

「それでどんな違和感があったんだ?」

「ミナトは魚が好きなはずなののに嫌いだったり、昔私に卵焼きを作ってもらって美味しかったって言っていたけれど、そんな設定が無いし、あ、あと、このゲームでは六月なのに、五月の桜餅や柏餅が今の時期美味しいって言っていたの」

「陸は警戒していたのかもしれないな。それとも由紀ちゃんが来て正気に戻ったのかな?」

「な、何で私が来ると正気に戻るのよ」

「遠目で見るとミナトがミントを好きみたいでおかしいなと思っていたけれど、そういう設定が無いのにミントを追いかけ回しているような……」

「そ、そういえば恋人同士にミナトはなる相手がいないみたいだけれど……」

「ああ、本当は全てに優れた完璧超人の男など許さない、余らしてやると思ったのだけれど、カモミールとくっつく設定にしてあるよ。ユーマルートだと」


 微妙に予想が当たっていたと私は少し脱力する。

 けれどいつまでもそうしていても仕方がないので、他の疑問をぶつける。


「その攻略キャラについて聞いていい?」

「もちろん」

「幼馴染キャラには何か秘密がって攻略本には書かれていたけれど、ミナトとユーマが兄弟なだけ?」

「そうだよ」


 あっさりと答える蒼一にそこまで秘密かなと思いつつ、私は次々と聞いていく。


「ヒュウガちゃんが男装していた理由は?」

「ヒュウガちゃんは病弱な自分が気にらず、強い男になりたかったので男装して入学した。でも体が弱いので保健室登校していたんだ。でも体が弱いとは言え運動神経は良いので突発的によけたり攻撃したりするのは得意という設定だ」

「他にはどうしてローズマリーにサトルが寝取られるの?」

「……今中学生が知っているとは思えない危険な言葉が聞こえた気がするけれど……確かに寝取られといえばそうだけれど、実際は、サトルが甘やかしすぎたためにミントはああなってしまい、苦渋の決断で離れた部分があるんだ。例えば他の人達の前ではサトルを下僕扱いするけれど、二人の時はありがとうとお礼をちゃんと言うとか……」

「あー、二人だけじゃない時でも、私、お礼を言った気がする。それで私は疑われたのかな?」

「確かに由紀は由紀のキャラでしかないからな……。二つに分裂したのもあったのか、それともローズマリーの影響を受けにくいようにしておいたけれど、元の性格そのままになってしまったのかも。でもそれなら別人だものな……けれど都合が良いから、排除はされなかったと」

「そういいえば蒼一兄ちゃんは排除されないように気を付けていたみたいだけれど、排除されるとどうなるの?」

「支配下に閉じ込められるね。もっとも僕は脱出できるけれど、その代わりにまたやってくるとローズマリーは色々と障害を置いてこのゲームに入れなくされてしまうんだ。ついでに能力も制限しようとしてくるし。現に由紀の声が僕には聞こえなかったしね」

「何だか完全にローズマリー、心ちゃんの支配下だね。このゲーム」

「優先順位を付けたのがやっぱり不味かったみたい。ただ外部からはどのゲームもそうだけれど強制ログアウトできるし、それが止められても、他のVRゲームと同じように強制的に外部から連れ出す方法があるから問題はあまりないんだけれどね」


 それは私も知っている。

 だからゲームならそんな危機感はなかったのだが、そもそもこのゲーム、


「現実味がありすぎるよ。初めの方だけ見ていた時は、何処からどう見ても偽物っぽい世界だし、私がやっていたVRゲームよりも安っぽいなって」

「他のゲームも本当はこんなものだよ? 外部から画面を見ると丸わかり何だけれどね」

「そうなんだ。そして初めの方の設定やら何やらは覚えていたけれど、蒼一兄ちゃんがいるからと思って良く見ていなかったし、攻略対象者は人間ぽいし、色々な物の質感も凄いしで、現実かと思って不安だった」

「へー、どんな所が現実っぽかったのかな?」

「うーん、まず、地下鉄とか、ネットが使えたりとか、メールが使えたりとか、あとGPSかな」

「一気に質問してきたな。まず地下鉄だけれど、ああいった素材は売られていてうちもそれを使っているけれど、地下鉄などの駅は全て作られていないので途中下車すると駅から出られなかったりする。でもって駅で次の電車を待つはめになるんだ。機会があったら試してみるかい?」

「……いらない」

「残念だね。後ネットはゲームがネットと繋がっているから検索できるし、ゲーム内で必要な情報のコピーができるように設定されているんだ。ゲーム内での自由度を持たせるための配慮としてね。また、メールはゲーム内でキャラ同士で連絡取れるようにしていて、それが携帯電話などのメールとして使えているようにしていたんだ。あと、GPSは良く分からないな」

「もう一人のミント、美奈がその機能を使って私と鉢合わせないようにしていたみたいなの。それで私のいるすぐ傍のお店に入っていたりとかしていたの」

「ああ、なるほど。それは多分GPSじゃなくてキャラクターがその場所にいますと表示される画面なだけだね。現実のGPSは、民間のものはまだまだ精度が低いんだ。もっとも、それでもある程度場所は分かるけれど……その時点で、ゲーム確定だね」


 ふふんと蒼一が偉そうに笑う。

 何だか馬鹿にされたような気がして私はむっとしていると、


「それだけリアリティがあって、そのキャラになりきれるのがこのゲームの良い所なんだけれど……やっぱりローズマリーの性格を、一見大人しそうだけれど実は気が強くて目標のためにはもう突進してしまう少女にしたのがいけなかったかな」

「……それで、他の人達もそのキャラクターの性格に思いこまされたの?」

「うーん。でも本当は、そこまで強い影響がない範囲で引き起こされるはずなんだけれど、希に、キャラクターとの性格などがとても親和性が良い場合、なりきってしまうというのがあって。もしかしたなら全員が全員自分にそっくりなキャラをあてがってしまったのかも。そして、心ちゃんが逆ハーレムになって怒った時の激情で理性が飛んで、しかもみんな油断していたのでそういったキャラだと強く思いこんでしまうようになって……自身の現実世界の記憶を思い出せない状態になってしまったと」

「それを回復する方法は?」

「さっき由紀ちゃんにやったのと同じだよ。お腹の辺りに触れて、その認識を低下させる装置を弱めるんだ。完全に切ってしまっても良いんだけれど、作り物感が強くなってゲーム酔いする場合もあるらしいから、弱めにしているんだ」

「そう言えばさっきから前よりも作り物に見える気がする」


 これが認識の低下の影響なのだろうか。

 こんなに私は周りが見えていなかったのだろうか。と、


「それで、逆に何処がゲームっぽかったか教えてもらえるかな」

「……カレンダーに私が書いていないのに印が記入されていく様子とか、体育のネコミミイベントとか、攻略本が他の人には見えない、とか」

「カレンダーは日付をゲーム内で知る為の措置。ネコミミは僕の趣味。攻略本は、本と思っているけれど実は、ゲーム内で半透明の画面が出るあれを、ただ単に本と認識しているだけ。試しにその攻略本をだしてみなよ」


 言われて出してみると、そこに現れたのは板状のノートのような模様のついた画面で、


「……これが私が見ていた攻略本?」

「そうだよ。そしてそれは、他のキャラが実は電子画面上でキャラの過去や出来事を得ていたのが由紀ちゃんには見えなかったように、その攻略本も由紀ちゃん固有のものだから周りの人には見えないし触れられない」


 それを聞いて私は、初めにユーマが見えないと言ってしかも触れられないのを思い出した。

 まさかそれが理由だとは思いはしなかったけれど。でも、


「やっぱり私はこの世界がゲームだって分かっていた気がする。だからあんな風に自由に飛びまわれたのかも」

「もっとも、施しておいたローズマリーに攻撃に対抗するそれがあったから、由紀はある程度自由に動けた部分が大きいと僕は思うな。ミントのままだとイベントのために悪役にされてしまうかもしれないし」

「いっそのこと悪役キャラなんてなくしてしまえば良いんじゃない? その方が安全だわ、後味も良いし」

「それもそうだね、良い案だ。裏設定を前面に押し出して、良い人設定に改良する方がゲームとして安全かもしれないね」


 そう会話しながら私は、屋上へとやってきたのだった。

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