過去編は短く終わらない!-その1
私の名前は田村由紀、14歳、中学二年生。
今日も今日とて文芸部の部室で、皆と一緒にお昼ご飯を食べていた。
「今日のお弁当は、卵焼き―! これは私が作ったんだよー!」
そう私が同級生で同じ部活の藤本心ちゃんに卵焼きを見せる。
同じ文芸部なのだが、彼女のお姉さんである藤本花と私の従兄のお兄ちゃんの田村蒼一は同じ職場で働いていて、VRゲームを作っているらしい。
それを知らずに同じ部活に入り、私は大友達になったんだけれど。
普通に良い子なのだが、時々どSな時があり、ちょっと私はドキドキしてしまう事もあるが、性格は良い方なので一緒にいる事が多い。
そしてあと一人、まだここに来てはいないが三浦美奈という引っ込み思案な女の子がいる。
その三人で、仲良し三人組ワンセットでお買い得! といったように扱われるのは、私自身は嫌ではない。
そこで私が自慢げに見せたお弁当箱の卵焼きに心が、
「わー、由紀、凄く綺麗に焼けているね。美味しそうな卵焼き」
「んふふ、今日はみりんを使って甘めの仕上がりです。って、ぁあああ!」
そこでは私は、私のお弁当箱から卵焼きが奪われるのを目撃した。
その卵焼きはすぐに奪った彼の胃袋へと消えて行った。
そう、私の自信作が、自信作が、自信作がぁああああ。
その卵焼きを咀嚼し飲み今度彼は、私ににこやかに笑い、
「うん、なかなか美味しいな」
「当り前よ! 私が頑張って作ったのに! 酷いじゃない、陸!」
そう目の前にいた彼、今井陸に私は怒った。
そんな彼は私が起こるとさらに楽しそうに笑って、
「こんなに由紀は、女の子らしいお淑やかさからは離れているのに、どうして料理だけは上手いのかな」
「いつもいつもいつも、どうして一言余計なのよ。普通に褒めれば良いじゃない!」
「……由紀の料理は美味しいから、たまには分けて欲しいな」
「う、え……べ、別に、作ってあげても良いんだから……」
「なーんて冗談だよ。由紀はすぐに調子に乗るなー」
陸が楽しそうに私に笑いやがりました。
それに私は頭に来てしまう。
だって、今の言葉をちょっとだけ素直に言うのだって、それだけでも私は緊張してしまうのに。
そう、私は彼の事が“好き”なのだ。
けれど当の陸は、私をからかってばかりで、今日だってそうなのだ。なので、
「食べ物の恨みは恐ろしいのよ!」
「そうなのか。それで?」
「……やられるまえにやれ」
「返り討ちにしてやるよ」
「だいたい、この前の抹茶クッキー、一気に全部食べやがって。あれじゃ味が分からないし、頬がハムスターみたいになっていたじゃない!」
「由紀が全部返せって言うからだ」
「ああもう、陸と話していると頭にくるぅうううう!」
そこで、大人し目な三浦美奈と、同学年の陸の弟、今井祐、そして大人し目な松井次郎、そしてわが部活の新入部員の二人、宮本楓と野口真人が現れた。
そこで楓ちゃんが、
「由紀先輩、また陸先輩に手を出されているんですか?」
「楓ちゃん、誤解を招きそうな発言は止めるべきだと思わないのかね?」
「えー、でも私こんな面白くて素敵な先輩がどうなるのかにまにましたいですし」
「もしや……恨んでる?」
「まさかー。以前苛められていた時に助けてくれたのには感謝していますけれど、その後罠にはめて真人の前で告白させられた昨日の事はまだ覚えているんですよー」
そこで真人君が不安そうに楓を見て、
「やっぱり俺なんか……」
「違うよ、好きなのは本当だもん。なので、一人身な由紀先輩の前でいちゃいちゃする事にしました! ほら、真人、こっちこっち」
「ちょ、腕に抱きつくなよ楓、恥ずかしいというかみんな見ているというか……」
「見せつけるのよ。全力で!」
そんな楓は由紀に似ているなと皆がいった一幕もあったのだが、そこでようやく食事をはじめて、私は心に話しかけられる。
「ところで例のブツですね」
「うん、分かってる、予約しておけばいいのね」
心はほっとしたようだ。
実は、今度新作の乙女ゲームであるVRゲームのテストプレイを私達文芸部がする事になったのだ。
ただ私は捻挫をしてしまい病院に行かないといけないので、遅れて行く事になっているのだが、そのテストプレイの時間に心がお気に入りの有名なアニメキャラの抱き枕カバーが限定発売されてしまうのだ。
すぐに予約が埋まってしまうので、その予約を私が頼まれたというわけである。
ただこのテストプレイの状況によっては、必要なくなるかもと私は見ていたのだが、
「上手く、佑との関係が近づくといいわね」
「! それは、うん」
そうこそこそと話している私達に美奈が、
「二人だけで内緒話はずるいです!」
「あはは、ごめんごめん。テストプレイのキャラの話をしていただけ。確か、心は主人公のローズマリーで美奈が悪役のミントだっけ」
「そう! 悪役! 美少女で全てのキャラを魅了する美人キャラなの! そして悪! 何だか心が躍るわ~」
嬉しそうな美奈。
実はこのゲーム、主人公は最優先ではあるのだが、そのサブキャラにもなれるという画期的なシステムらしい。
これを開発したのが私の従兄弟のと、心の姉の花なのだ。
自慢げに蒼一兄ちゃんは話していたが私にはさっぱり分からなかったが、面白そうなのは確かなようだったので、遅れて行くのが私は少し悲しい。
ちなみにこの文芸部の全員と、心の姉の花がテストプレイする予定だ。
「楽しみだな~」
その時私は気楽にそう思っていたのだった。




