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私はヒーローになるの!

 何で怒られるのよと思っていつつ、


「どうして私を“由紀”って呼ぶの?」

「だって……ああ、そうか。主要キャラの一人になっているから仕方がないか。一応事前にいくつか設定してあるから、ここで手を加えてもだ以上かもしれない。ちょっと待って、少し“切り離す”から」


 おいでおいでとモブモブ君(仮)が私を手招きする。

 この対応の変わりようはなんだろうと思いつつ、私はそのモブモブ君(仮)に近づく。

 すると彼は私のお腹のあたりに手を当てて、そこに光があふれるような光景を目にして……次の瞬間、私は“全て”を思い出していた。


「あ、蒼一兄ちゃんお久しぶり?」


 私は微笑みながら、モブモブ君(仮)――従兄の、蒼一兄ちゃんにそう言うと、


「そうだね、この世界では数日が経過しているからね。まったく、追い回されて僕がどんな怖い思いをしたか」

「あはは、だって私よりも背が小さいんだもん」

「……色々と言いたい事はあるけれど、無事で良かった。モブ子になるはずだったのに、まさか悪役ミントになっているなんて。すでにその役は決まっていたはずなのに」


 それを聞きながら私はもう一人のミント0号を思い出して、


「あー、だから頭をぶつけて二つに分裂してしまったのかも」

「二人に? 確かに二つの意志は混じり合わず、一つにはなれないだろうから……ありうるね」


 確かに二つの別の行動を望む存在が一つにあったなら、別れるしかない。

 ただ、本来であるなら私はミントにはならなかったはずで、


「でもどうして“失敗”したんだろう? 私はモブA子になるはずだったよね?」

「それは後での検証かな。おそらくはいつものようにローズマリーが邪魔をしたのだろうけれど……どうにか微かな声が聞こえたから、誰になっているのかは分からなかったけれど目印も兼ねて“攻略本”を投げたんだけれど、無事届いて良かった」

「……顔に当たって痛かった」


 思わず恨めしそうな声になってしまう私。

 それに蒼一吹き出し、それに私がますます機嫌を悪くしていると、


「ごめんごめん、でも由紀が誰になっているのか分からなくて、攻略本を渡す事しかできなかったからね。声も、“声”からはどのキャラになっているのかこちらからは認識できなくて、とりあえずたまに聞こえる“声”の意味はわかったから、その通りに時間を進めたりしたからね」

「もしかしてミントの屋敷の方が会話が聞こえやすくなっていたりするのかな」

「それはありうるかも。ローズマリーの領域は、学校が一番強いわけでその次が彼女の通学路や家だし。もちろん本人のいる場所に近いほど影響は強いけれどね。でも全部が聞こえたいわけではなかったから、僕……もしくはそれに類似した何かに伝えたい言葉だけが届いていたのかもね」

「……乙女ゲームに転生したら、神様に文句を言ってやろうと思ったの」

「僕は神様か。それは面白いな」


 蒼一が面白がって笑うのを私はそれを聞きながら、


「でも何で私を攻撃して、蒼一兄ちゃんは無事だったんだろう」

「多分、由紀を倒して安心したから僕はノーマークになったのかも」

「酷い。でも全部思い出したからこの世界がゲームってわかって良かった」

「やっぱり現実世界みたいに認識してしまう? ああでも接続がだいぶ進んでいたから、現実みたいに感じられていたみたいだし……」

「でも、無意識にこの世界はゲームで、現実世界に戻れるんだって思っていたから安心していられたような気がする」

「ただ単に由紀が向う見ずな性格だからじゃないかな? 友達を助けに行くヒーローみたいで格好いいから頑張る、って言うのが一番初めに言った言葉だしね。しかも目を輝かせて」

「うるさいなー。でも、これから私はヒーローになるの!」

「そうかいそうかい。それでようやく会えたんだ。早速始めようか」


 そう、蒼一が笑ったのだった。

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