いたいけなモブ
体育の時間、モブモブ君(仮)は見かけなかった。
やはり次にであったら何が何でも捕まえようと決意する私。
そしてヒュウガちゃんと楽しそうに話すレイ。
どうやら私が踏む約束は忘れているようだ。
よーし、黙っておこう、二人は上手くいっているみたいだしと私は生温かく見守りながらユーマを見つけたのでそちらに行く。
「ユーマ、昨日はどうだった?」
「ローズマリー都の中が知事待った気がする。思いきって誘って良かった!」
「なら今度はカモミールなしで頑張りなさいよ?」
「……その内」
「多分そろそろ逆ハーレムエンドにはいかなくなるだろうから、ある程度は自由かもね」
「本当か! よし、これからもミント、よろしく」
邪魔が入らないんだったら、自分で口説きなさいよと私は嘆息しそうになりながらも、これからもいじってやろうと決める。
そしてローズマリーとカモミールが来て、そして体育の授業が始まったのだった。
本日も素敵なイベント盛りだくさんの体育の授業が終わり、ささっと着替えて外に出ると丁度、ヒュウガちゃんとレイが歩いていく所だった。
「二人とも揃ってどうしたの?」
「いえ、レイ君が僕が倒れないようにってついてきてくれていて」
「面倒見が良いわね、良い所があるじゃない」
レイが不良っぽい見た目ながら頬を染めてそっぽを向いた。
愛い奴め、くふふふふ、と心の中で思う私。
そこで彼らの背後を走り去るように歩いていく人影が。
とっさに私は叫んだ。
「捕まえて!」
「わ、分かった」
「はい!」
そこで私は病弱なヒュウガちゃんにも頼んでしまったと気付いたが、そんなヒュウガちゃんは目にもとまらぬ速さで私の目の前を走り去り、そのまま私が示した人影にタックルする。
「えーい!」
「うぎゃあああああ」
「ミント様! 捕まえました! ……ああ、久しぶりに全力を出したら目眩が……きゅう」
まるで獲物を捕まえた子犬のような晴れ晴れしい笑顔のヒュウガちゃんは、すぐに青い顔で倒れた。
病弱設定がやはり生きているらしい。
「ありがとう、ヒュウガちゃん。貴方の犠牲は無駄にしないわ」
「お役に立てて光栄です、ミント様……がくっ」
お礼を言うと一瞬だけヒュウガちゃんは覚醒したがすぐに倒れてしまう。
そんなヒュウガちゃんをレイが慌てて抱き上げて、私はその下敷きになったモブモブ君(仮)の腕を掴んで逃げられないようにする。
そこでレイがヒュウガちゃんを背負って、
「じゃあ俺はこいつを保健室に連れて行くから」
「よろしく!」
レイを私は見送りながら、モブモブ君(仮)という秘密を知るのは少ない方が良いと暗黒微笑しつつ、背中にヒュウガちゃんの胸がついていないかなーと思いはしたのは良いとして。
捕まえてプルプル震えるモブモブ君(仮)を見つつ、
「さてと、洗いざらい全部吐き出してもらいましょうか。貴方の全てをさらけ出してもらうわよ?」
「ぼ、僕は何も知らないいたいけなモブなんです」
「お話はそこの空き教室でしましょうね」
「いやだぁああああ」
悲鳴をあげてじたばたするモブモブ君(仮)を空き教室に引きずり込み鍵をかける。
「さて、もう逃げられないわよ」
「く、くう、仕方がない。もう一回転送を……」
「所で私、こんなものを持っているのだけれど」
そう、モブモブ君(仮)にあのネタばれしない攻略本を見せた。
モブモブ君(仮)は微動だにしなくなりました。
そしてしばし無言のまま時間が過ぎて……。
「わざわざ意味深な事を言わなくてもいいじゃないか! 由紀ちゃん!」
そう、モブモブ君(仮)に、何故か私は怒られたのだった。




