全てに優れた完璧超人の男など許さない
結局、由紀なる人物が誰なのか分からなかった。
家に帰る途中の帰り道に私は色々考える。
ただ私自身うっすらと馴染みのある名前なのだが思いだせない。
なのに皆知っているのに誰か思い出せないという……。
「あのモブモブ君(仮)も言っていたし、本当に誰何だか」
うーむとうなってから私は、これはとりあえず保留にしておく。
それよりも、ヒュウガちゃんとレイの二人が良い感じになってきているのを見ていると、全体としてある程度、お相手が出来ているように感じる。
そうもともと設定されているのかもしれないが、そうなると、攻略対象の中でミナトだけが余る。
「これに何か意味があるのか……と思いたいけれど、全てに優れた完璧超人の男など許さない、ふはははははっ、って言っていた人がいたような……」
それもまた良く私は思いだせない。
どうやら現実世界の記憶がだいぶ曖昧になっているようだ。
それともこの世界に馴染んでいるのか。
「冗談じゃないわ。やっぱりそろそろモブモブ君(仮)をつかまえないと」
そう思いながら私は呻く。
それにミナトはなんだか私に対して前よりもちょっとだけ優しいというか気にかけてくるようになっていてそれが私も嬉しい気がして困るのだ。
彼はゲームの住人なのに。
「い、今私は何を考えたのかしら、ないない、絶対にない。そもそも気になったのはミナトが“あいつ”に似ているからで……」
そこで相変わらずその“あいつ”が誰なのか思い出せない自分に気付く。
本気で早く何とかしなければと、私は焦りを覚えたのだった。
ミント0号の、サトル君が花束をくれた惚気話を延々と聞いていて、リア充爆発しろと思った頃。
日付が変わる瞬間のミント0号を私は目撃した。
瞳が虚ろになって、そして、
「あ、すみません。一晩中貴方に惚気話の相手をさせてしまって」
「え、えっと、そう……」
そんな風にしか私は答えられなかった。
一晩中なんて私はされていないけれど、ミント0号はそうだと思っている。
「認識が何か違うのかしら。むしろ私が、ではなく攻略対象の人達、主要キャラの認識がずれているのかしら」
だとするとやはりこの世界は現実世界と事なり、下手をするとあの主要人物達は私と同じい世界の存在でこの世界に馴染んでいる可能性もあるのではないか?
由紀という特定人物の共通がある時点で、私はいづくべきだったのかもしれない。
「この世界に馴染んでしまった私の世界の住人てこと? 私も少し急がないといけないかも」
そのためにもそろそろモブモブ君(仮)を捕まえないとと思っていると、
「ミントさん、おはようございます」
「あら、ローズマリー、おはよう。それで昨日はユーマとどうだった?」
「カ、カモミールもいました!」
「そうだったわね。それで楽しかった?」
「はい! ユーマと違うアイスを分け合ったりいろいろしたんですよ!」
嬉しそうに話すローズマリーに、この二人は上手く言っているわねと私は思って、そうかミナトのお相手はカモミールになるのかと気付いた。
気付いて私は少しもやもやしてしまったのだが、そこで、
「今日は朝から体育なので、また後で」
「そういえばそうだったわね。……チャンスだわ」
「え?」
「いえ、何でもなくてよ。それではまた後で」
「はい! ミントさんもずっと一緒にいてくださいね!」
そういうローズマリーに、うむ、上手くローズマリーの好感度が上がっているわと私は悦に浸ったのだった。




