やはり私は正しい
帰ってきたミント0号に、サトルの私服姿も含めて延々と惚気られたわけだが。
「……そろそろいいかな。ちょっと攻略本をチェックしたいし」
「あ、ごめんなさい、私……」
「いえ、いいの。明日遭遇するであろうイベントのキャラをまとめて相手にしないといけないからね」
「……ですが遊園地でチラリと見かけたユーマとローズマリーはもうくっついている感じでしたが」
「油断は禁物よ? 明日を含めて後四日でケリをつけないといけないし」
「期限が決まっているのですか。それでそれが終わったらどうなるのでしょう」
「元の世界に戻れるといいなとは思うけれど、無理そうならローズマリーの傍にいて人生イージーモードを満喫しようかと」
「……」
「だって主人公だもの、この世界では都合がよく出来てるとは思うわよ?」
そんな私をミント0号は何とも言えない表情で見ていたが、何も言わなかったので放っておいた。
そこで私は壁にかけてあったカレンダーに気付いて、
「カレンダーの印しつけ、ありがとうね」
「あ、それなんですが、私、うっかりそれを忘れてしまって……」
すみませんと謝るミント0号だが、私は目を瞬かせる。
確かにそこには他と同じような綺麗な円形の赤い丸印が付けられている。
そういえば初めからこのカレンダーにはその日付らしき場所に丸印が付けられており、あたかもコピーして貼り付けたかのように歪みのない円形だ。
確かにそういった才能の人はいるが、大多数の人はこれほどまでに同じような円形はかけないだろう。
それによくよく見れば筆記用具を使ったのではなく印刷されているようにも見える。
「……日付をカレンダーで確認できるシステムか」
「? どうしたのですか?」
「いえ、気がついたら日付を自分で印づけしていたみたい。それで、明日の予定だけれど、出来れば明日は出歩かないで欲しいの」
「構いませんよ。サトルが寝取られないようお願いします!」
「もちろん! でもモブモブ君(仮)を捕まえたいわ。見かけたら即効で捕縛したいから縄だけ持って行こう」
意気揚々とロープを取り出す私を見てみんと0号が、
「何だか恋い焦がれているみたいですね」
「ええ、捕まえたなら二度と話したくないくらいに」
その時のほほえみが怖かったのか、ミント0号ははそれ以上何も言わなかったのだった。
ミント0号と別れて、空が夕暮れ時になってから青空に変わるのを目撃した私。
さてとと立ち上がる。
「ロープをもってと。今日もまたモブモブ君(仮)と出会えたならいいのだけれど」
そうしたら、もう少し事態は変化しどうな気がするのだ。
この中途半端な攻略本の件も含めて、中途半端に現実的なこの世界。
正直私が現実世界で死んでこの乙女ゲームに似た世界に来ていたとしたら……。
「その時はその時ね。それも考えて私は計画的に行動しているのだし」
やはり私は正しいと再認識して、家を出る。
徒歩でテクテクと歩いて行くと、丁度目の前の曲がり角からモブモブ君(仮)があらわれたではありませんか!
「きっと、私の日頃の行いがいいからね! 逃さなくてよ!」
「いやぁあああっ」
ああ、素敵で可愛らしい悲鳴、もっと追い詰めて啼かせたくなるわと狙いを定めた所で……ローズマリー達がやってくるのを目撃する。
仕方がない、一旦引くかと思った所で、モブモブ君(仮)は私の方を振り返った。
そして、普通の人間とは思えないような動き、というかはね飛ぶように私の頭上を飛び跳ねてきた道と反対方向へ走って行く。
それに私は暫く呆然としてしまい、次に私の頭上を飛び跳ねた時に捕まえればよかったと思って、それから……。
「モブモブ君(仮)は、ローズマリー達を避けている?」
そんな疑問が私の中で浮かび上がった所で、私はローズマリーに声をかけられたのだった。




