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悪女めいた笑みを

 食堂での昼食は、A、B、C定食に別れていた。

 その内のA定食はタルタルソースの乗った鳥のタツタ揚げとお味噌汁がついた定食で、私はそれを選択する。

 それと同じものをローズマリーと意気消沈したユーマが選ぶので、


「別に私と同じものを選ばなくてもいいのよ?」

「いえ、私もこれを食べたかったですから」


 このローズマリーちゃんは良い子だなと思いながらユーマを見て私は問いかける。


「あの、エビフライ、ハンバーグ、鳥の竜田揚げ、三点もりもりC定食を選ばなくて良かったの?」

「……食欲がないからいいんだ」


 そう、げっそりとした表情でユーマが呟く。

 それはそうだろうなと私は思う。

 実は先ほど、生徒会長のミナト・橘に会ってしまったのだ。

 眉目秀麗、頭脳明晰、スポーツ万能といった、属性を付け過ぎて破たんするんじゃないだろうかと心配してしまいそうなキャラである。

 もっとも見かけは爽やか、中身は腹黒な生徒会長様であったが。

 そんなキャラとどういった接触があったかといえば、ただ単にでてきた腹黒生徒会長様とローズマリーがぶつかって、


「きゃあっ!」


 可愛い女の子らしい悲鳴を上げるローズマリーだがそこで、そんな彼女がその生徒会長にささえられる。

 見つめ合う二人。

 顔色を青くするユーマ。

 ユーマの様子を見ているのも楽しそうではあったのだが、それよりもローズマリーがどうなるかが気になる。

 そこでローズマリーの手を握りながらあの腹黒生徒会長が、


「こんな可愛らしい方がいるとは気づきませんでした。ぶつかってしまったお詫びに、食事をおごらせて下さい」

「え、えっと、でも……」


 ちらりとローズマリーが私を見るので、私はその腹黒生徒会長とやらに、


「残念でしたわね、彼女は私が先約しておりますの」

「おや? 相変わらず顔とスタイルだけは良いミントですね」


 そういえば、このミント、この腹黒生徒会長と昔からの知り合い設定があったわね……と思いだす。

 思いだしながらも、悪口を言われたなら言い返すのが主義なので、


「あら、相変わらず誰に対しても、いえ、女性に対してだけ下心満載で優しく接するのですわね、生徒会長様」

「口の悪さにかけては君には勝てないよ」

「腹黒が何を言っているのだか」

 

 そこで腹黒生徒会長が複雑そうな顔で私を見た。

 なんだその表情と思いつつも、そこでこの生徒会長がいつもの天使のような頬笑みで、


「ではローズマリーちゃん、こんな粗暴なお嬢様ミントとは違うおしとやかな君と、近いうちに食事を出来るのを……痛いっ! 何をするんだ!」


 私は先ほどの悪口が気に入らなかったので、その生徒会長の足を思いっきり踏みつける。

 痛がる彼にふんとそっぽを向いて私は、ローズマリーとユーマを連れて食事をとったわけである。

 そしてユーマと二人っきりの機会に恵まれた私だが、


「これで分かったでしょう? 私が言った通りになるって」

「う、うぐ……実はミント、お前の差し金じゃ……」

「貴方とローズマリーをくっつけて、私にどんなメリットがあるって言うの? 良いから素直に言う事を聞きなさい。悪いようにはしないから」


 そう、私は不安そうなユーマに、悪女めいた笑みを浮かべたのだった。

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