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ぽちっとな

 こうして家に帰った私は、早速ミント0号と打ち合わせをする事にした。

 なにしろ私には時間がない。

 恐らく今日、日が暮れたならすぐに遊園地に行く事になっているからだろうから。

 なので私はミント0号を自室に招き入れたのだが、そこで、


「私の官能小説をとり返したわ!」

「ああ! 後で読もうと思ったのに!」

「探してなくなった時はどうしようかと思いましたが、ふふ、良かった―」

 

 その内また取り返してやると私は心の中で誓いながら、


「さてと、それで遊園地の予定だけれど……初めから貴方が私のふりをして、サトルと行くというのは?」

「……私、貴方のように演技出来る自信がない」

「そう? 私は普通のつもりだけれど」


 それにミント0号はうわ―、この人何も分かっていないよ、という顔をした。

 それを見ながら私は、


「普通よ、普通。大体こんな清楚で乙女な私に向かって、そういえばミナトは粗暴だの何だのと言いやがりましたよね……」


 思い出したらむかむかしてきた私。

 本当に、“アイツ”と同じで性格が悪い。

 もう少し女の子扱いというか、恋愛小説のような溺愛とまでは言わないけれど、可愛がっても良いと思うのだ。


「絶対に間違っているわ。もっと私を女の子として扱うべきよ」


 そう私が愚痴をこぼすとそこでミント0号が、


「それは、本当にミナトなのですか?」

「? どういう事?」

「ミナトは……少なくとも私が知っている限り、とても紳士的で、私に対しても貴方のような言動をとられた記憶がありません」

「……そうなの?」

「……まるで、貴方と同じように、別人になってしまったかのようです」

「それは、私と同じ、外の世界の人間だという事?」

「そこまでは分かりませんが、変わっているように感じます」


 それを聞きながら少し考えて、


「ミナトと貴方が直接話してもらうわけにはいかない?」

「……別人だとばれますよ?」

「でも、外から来た人なのかどうかが知りたいし、遊園地の件が収まってから一度会ってもらってもいいかしら」

「ばれていいなら私もかまいませんが……分かりました」


 ミント0号の協力を得た私。

 そして、遊園地には先に私が出て、後からミント0号が来る事になった。


「じゃあ、ユーマが逃げた時に追いかけるローズマリーを更に私達が追いかける。そしてわざと遅く走るから、そこで私とミント0号は入れ替わって、体調不良でサトルに介抱してもらいながら、カモミールと……レイとヒュウガちゃんを止めてね」

「ヒュウガちゃん?」

「保健室に良くいる子、あの子、男装の麗人で私が気に入っているみたい」


 ミント0号は何とも言えない表情になり、私を見上げたが気付かなかった事にして、


「それと、もうひとつお願いがあるの」

「何でしょう?」

「この部屋の壁にかかっているカレンダー、日付が変わるごとに前の日に、印をつけて欲しいの」

「構いませんが、どうしてですか?」

「私の時間の感覚がおかしいようで、今が“いつ”なのか分からなくなりそうですから」

「……貴方がそういうならばそうなのでしょう。全員ゲームか何かのようにモブに見えるようですから」


 ミント0号は呑み込みが早かった。

 そして私は再び別れて、攻略本を読みあさる。

 一通り目を通した所で、窓の外が夕焼けから青空となり……。


「うーん、ぽちっとな」


 モブモブ君(仮)の声が聞こえて、窓の外が再び夕暮れになり青空が広がるのを繰り返し……青空で止まる。

 私はそこでカレンダーを見ると、金曜日まで時間が経過したらしかった。


「上手くつじつま合わせがされていると思うけれど、こうも現実のような感覚が強いと頭がおかしくなりそうだわ。……本当の異世界みたいで」


 そう私は、深々と嘆息したのだった。

これから予約投稿で、ストック分まで一時間ごとの予約投稿を行います。よろしくお願いします。

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