みんな個性的
屋上に来た私は、うっかりミント0号と遭遇した。
以前ここにユーマと来ても全く出会わなかったために失念していた。
きっといつもは何処かに隠れていたのだろうと私は思いつつ、顔を青くしているユーマに、
「どうしたの? そんな顔をして」
「だ、だってミントが二人……」
「二倍でお得でしょう?」
「ポイントが二倍みたいに言うな! 何だこの悪夢。俺は奇妙な世界に迷い込んだのか? ……いや、双子という説もありうるか?」
ぶつぶつ言っているユーマに私は、
「何だかよく分からないけれど二人に分裂しちゃった☆」
「更に俺が分からなくなるように言うな!」
混乱するユーマにもう一人のミント0号が、
「だから貴方は脳筋と言われるのよ。愚かね」
「……ミント?」
ユーマが、自分の良く知っているミントだと気付いたのかもしれない。
けれどそこで私は、
「かぼちゃ!」
「いやぁああああっ、恥ずかしぃいいいい」
その一言でのたうちまわるミント0号。
上手く先ほどの訓練が効いているようだ。
この調子で引き続きミント0号の悪役脱出計画を続けて行こうと思った私だがそこで、
「それで……いや、もういい。次の計画について話してくれ」
「聞きわけが良くて助かるわ」
疲れたようなユーマに私は、ふふっと黒い微笑を浮かべた。
ユーマと、そして何故かミント0号がびくっとしているが、些細な事。
「ユーマは、その遊園地に行って、ローズマリーの手を借りてある事をするんだけれど……そちらはどうでもいい」
「どうでもいいって……」
「それで日曜日の予定はどうなっているのかしら」
「えっと、クーポン券が手に入ったからアイスクリームの店に行こうかと思って」
「じゃあ、それを諦めてローズマリーの家に遊びに行きなさい。そしてそのまま押し倒してしまえ」
ユーマが噴き出した。
顔を真っ赤にしながら彼は、
「言って良い冗談といけない冗談があるんだぞ!」
「ええ知っているわ。それでローズマリーの家に行く? 彼女は家にいると言っているけれど、気が変わるかもしれないから貴方に引き止めておいて欲しいの」
「おまっ! ローズマリーと部屋で二人っきりとか緊張しすぎて、俺には無理だ!」
絶望したように叫ぶユーマに私は、確かにそうかと思いながら、となると危険な方法だが、
「……だったらそのアイスクリームのクーポン券を持って、誘いに行く?」
「それは……デートじゃないか」
「恋人同士じゃないから、お友達二人でアイスを食べに行くだけよ。ただ、その分フラグの危険性があるのだけれど……現在のルートだと、次回の接触の危険があるのはミナトだけのはずだから、そちらはこちらで何とか出来るわね。あと、そんなに二人だけが苦手ならカモミールに頼む?」
「! それだ!」
はっとしたように笑顔になるユーマに私は溜息をつきたい気持ちになりながら、
「……ユーマ、後ろ向きなのもほどほどにしなさいよ? それと私が頼むとカモミールは警戒しそうだから貴方から頼んでおきなさい?」
「分かった。……これで話は終わりか?」
「ええ」
「それでミントが二人いるのは他の奴らに話してもいいのか?」
「それは弱みにならないわね。貴方の頭が疑われるだけよ?」
「そうだな……」
意外に油断も隙もないユーマに私はそう答えたのは良いとして。
本当にこれがゲームなのかとユーマの言動を疑いながら、彼を見送ったのだった。
そして放課後、約束通りサトルの持ってきた顔写真付き生徒一覧を私はみたのだが、
「……ローズマリー達以外に全部モブにしか見えない。ミント0号はどう?」
「ええ! みんな個性的じゃないですか!」
「全部男子のほとんどがモブモブ君(仮)に見える……これでは探してもらえないわね。探してきてもらって申し訳ないのだけれど、使えなかったわ。ごめんなさいね」
それにサトルが、その一覧を見てミント0号と同じような事を言う。
やはり区別できないのは私だけのようだ。
こうして、名前と顔からモブモブ君(仮)を見つけてサトルに手伝ってもらおう作戦は、失敗したのだった。




