一石二鳥が私は好きなのです
この攻略本は、中途半端である。
食事を終えたミントは、心の中でそう毒づいた。
「そうよね、ヒュウガちゃんの百合情報もなかったものね」
実は女の子設定って、女の子用……なのだろうか?
私は新たなる謎に直面していると、現在私が読んで空気になっているユーマが、
「……何で他の奴と一緒に遊園地に行く事になっているんだよ、ミント」
「んー、必要なイベントだから?」
「どんなだよ! それに何となく、ミナトはローズマリーを気にかけていたじゃないか! 可愛いとか、お淑やかとか!」
「そういえばそんな事も言っていたけれどその前に私に対して、粗暴だのもっと女の子らしく打のミナトが私に喧嘩を売っていた“だけ”のような気がするけれど」
先ほどの食事の時に、私はミナトに言われたのだ。
何でも腹黒生徒会長と他人行儀に呼ばれるのが嫌だとわけのわからない事を言われ、お断りをしたらそうなったのである。
そしてその結果、ユーマが不安になっているのだが、
「ローズマリーを褒めてはいたけれど私に対する攻撃よ?」
「でも、あんな風に言うなんてミナトはもしかしてローズマリーを……」
「見かけも良いしスポーツ万能だし秀才で生徒会長というリーダー的な魅力……不安になるのは構わないけれど、貴方にはローズマリーとくっつてもらわないといけないから、もう少し落ち着きなさいよ」
「……俺、今までミナトに勝てたためしがないんだ」
「そう、じゃあ今回が初勝利ね」
さーて、次はどうしようかしらと私が考えているとそこでユーマが、
「……その自信満々な様子が羨ましいよ」
「必要に迫られているだけだと思うけれどね。それに言ったでしょう? 大船に言った気でいなさいと」
「……やっぱりそこは泥船に乗ったような不安感が募るんだ」
「……別のフラグ立ててやろうかしら」
「やめてぇえええ」
悲鳴を上げるユーマだが、そこで、
「ミントさん!」
私に抱きつく男……女の子が一人。
ヒュウガちゃんだ。
「こんな所で会うなんて奇遇ですね、ミントさん!」
「そうね、なんちゃって不良なレイ君も一緒になって、どうしたの?」
見ると、レイのまわりはモブ生徒達が恐れるように遠巻きにしている。
そこれレイはプイっとそっぽを向き、
「……ヒュウガが保健室ばかりいるのもどうかって思ったから、会いに行ったんだ。そうしたら、これからも会いに来てあげて、って言われて食事も一緒にする事になったんだ」
「あら、レイ君良かったわね」
「べ、別に、いつも一人だったしちょうど良いというかなんというか……」
必死でレイ君はいい訳をしていたが、そこで、
「あ、ミントさんは今度の土曜日空いていますか? 私達遊園地に二人で行く事になったんですよ?」
「あ、おい、ヒュウガ、それは……」
焦るレイ君に気付いているヒュウガちゃん。
分かってて私を誘うなんて、どっちが目的なんだろうと思いつつ、
「二人で楽しんでらっしゃい。ヒュウガちゃんも、あまり私をだしにしないでね」
「えー、ミントさんとも一緒に行きたかったのですが」
「二兎追う者は一兎も得ずよ?」
「一石二鳥が私は好きなのですが、残念です」
そう答えるヒュウガちゃん。
レイはそれに翻弄されたらしく、ようやく安堵しているようだった。
その様子を見つつ私は気づく。
ひょっとして、ローズマリーがフラグを立てなければうまい具合にカップルが成立するのではないかと。
そしてローズマリーはユーマとのカップリングが一番しっくりくるのかもと私は思いながら屋上に上って……自分の失敗に気付いたのだった。




