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ありがとうございます―(棒)

 もう少し自習の時間がありそうなので、ミント0号に聞いてみる。


「まだ時間がありそうだけれど、サトルといちゃいちいゃする? それとも上がり症を直す?」

「……そういえば、サトルに告白する前に上がり症を治す手伝いをしてくれる約束だったじゃないですか!」

「まあまあ。約束は守るからいいじゃない。それに時間が空いたからサクッと片付けておこうと思って。……こういうのは思いっきりが大事なのよ。時間が立つと出来なくなるもの」

「……経験則ですか?」

「そうね、本当にもう、言えなくてね……」


 結局私はあいつともまだ、“良いお友達”のままだ。

 一歩踏み出せば変わると思うし、自分自身不安はあるけれど積極的な性格だと分かっているけれど、それでも……尻込みしてしまう。

 なのに諦めきれずいじらしくあいつを目で追って、べ、別に貴方のためじゃないんだからねと……。


「どこのツンデレよ、私」


 あまりな自分自身を思い出して私は頭を抱えた。

 この私が、確かに可憐な乙女である事は否定はしないが、そんな純情というか、恋に不安を抱くような体中がかゆくなるような想いに囚われて……駄目、考えていたらぞわぞわしてきた。

 そんな何処か顔色の悪いであろう私にミント0号が、


「どうしたのですか? もしや、貴方はまだ本当に好きな人に告白できていないと?」

「……そうだったのかも」

「ご自分の事でしょう? まさか自分の事を覚えていないのですか?」

「……悪かったわね。ここにきて記憶が随分と曖昧なのよ。……大体貴方だってサトルに告白するのに後ろ向きだったじゃない」

「そうですねー、そして貴方に告白を無理やりさせられる状況に持っていかれたんですよねー」

「そうよ、私には感謝するべきよ、きりっ」

「ありがとうございます―(棒)。なので私もその時は貴方の恋を応援させていただきますねー(笑)」

「ふ、この世界の住人ではない貴方に、私の恋のお手伝いができると思っているのかしら」


 そう私はバサッと自身の黒髪をかき上げる。

 実際にそうなのだ。

 この世界の存在ではない彼女達に恋のお手伝いは出来ないはずなのだ。


 だがこの得体の知れない不安はなんなのだろう。

 そもそもこの世界が本当にゲームであるという保証はない。

 そういった異世界に転生しているとしたら?


 そう思いながらちらりと私はミント0号とサトルを見る。

 この二人はゲームのキャラなのだが、こうしてみると本当に生きているように感じる。

 なんて言うのか、そう、意思を感じるのだ。


 その一方でその他の生徒達はまるで、存在するのに存在しないような奇妙さがある。

 試しにそのモブ達に話しかけてみた事もあるが、当たり障りのないというか……けれど会話に齟齬はなかったように思う。

 今日はいい天気ですね、といえば、そうですね、とそつなく返す程度に。


 そういえば私は主要人物ばかり気にしていて、モブや先生達、屋敷のメイドとも会話した記憶がほとんどない。

 ぼろが出るのも嫌という理由もあるけれど、この世界が実在していると思うのが怖いのだと思うか?

 それで無意識のうちに接触しないようにしている?

 そしてそれなら私は……現実世界の私はどうなっているのだろう?

 

「……でも何でこんなに不安感がないのかしら。まるで、私の中でこの世界が乙女ゲームの中だという、揺るぎない自信があるみたいだわ」


 根柢の部分で、この世界は作られたものだと私は“分かって”いるのだ。

 理由は不明。

 私にしては珍しいが、理屈なしでここは現実世界ではない、“大丈夫”だと思っている。

 けれどその違和感の理由は分からず、結局私はその疑問を自分の中で保留にしておいたのだった。

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