私は合理主義者なの
「酷いですぅ、酷いですぅ」
「あーあー、聞こえない」
ミント0号が涙目で私に抗議しているが、私は聞こえなかった事にした。
目的のために手段を選ばず。
素晴らしい、私!
さてさて、そこで責め立てるミントを無視して私は凍りついているサトルに、
「それで、どうする? ミント0号の思いを受け止める?」
「ミント0号とは?」
「もう一人の私。どうせ両想いなのだから、さっさと告白してくっついて欲しいの」
悪気なく告げる私に、サトルは変なものでも見たかのように私を見て、
「流石にこれはないのでは?」
「私は合理主義者なの」
「いえ、そういう問題ではなく……何が目的なのですか?」
「あら、話が早いわね、協力してくれる?」
「……話しを聞く前に協力の約束はできません」
淡々と返してくるサトル。
何だか本当に頼りがいがあるわー、でもね取られるエンドもあるから気をつけねばと私は思いながら、
「ローズマリーを逆ハーレムにさせず、ユーマとくっつけるため。……何でまた貴方もそんな可哀想な子を見るような目で私を見るの?」
そこで目の前のサトルが、駄目だこの人、頭がおかしいといったふうに私を見た。
失礼な、私だってやりたくてやっているわけじゃないんだからね、と心の中で毒づきながら、
「うーん、全部を覚えている訳じゃないのだけれど、この世界は私がやっていた乙女ゲームの世界にとても似ているの」
「……続けてくれ」
「溜息をつかないでよ。それで起動してやり始めてそして……気付いたらこの世界にいたの。元の世界の戻る方法は分からないけれど、とりあえずローズマリーの恋を上手く行かせないと、時間がループ、つまり攻略失敗という事で初めからにされてしまうのよ、記録した所からじゃなくて」
「……そのゲームとやらは分からないが、その、ロ-ズマリーの恋を成就させるとお前は消えるのか?」
「分からない。上手く元の世界に戻れればいいのだけれど、最悪、ここに残るには彼女の友人でいた方が良い。だってこのゲームの主人公はローズマリーで、ミントは悪役だもの」
そう告げるとサトルは何か反論したそうだったが黙る。
ミントが何と呼ばれているのか知らないサトルではないだろう。
なので私は更に、
「そしてこのゲームを攻略する私にだけ見える攻略本のようなものを私が持っているの」
「……そんな攻略本が存在するとは思えない。つまり、逆ハーレムが形成されるというのは冗談か」
「現実よ。そしてその攻略対象にサトル、貴方も入っているし」
つい口を滑らせて私はサトルに告げてしまった。
それを聞いたサトルは、更に石像のように凍りついたミント0号に気付き、すっと目を細め、
「ミント様を傷つけ俺を誘惑しようとする悪女など……成敗してくれる」
「だ、駄目よ、主人公に手を出したら破滅だわ! こういう時は媚びて、持ち上げて、腰巾着をやるのが一番安全なのよ!」
「……今俺は、一番そんな事が出来なさそうな人物からそんな話を聞かされたような気がする」
「失礼ね、私のへりくだりモードは凄いわよ!」
「……それで、そのユーマとくっつけてしまえば、俺と関係しないと?」
「そうなの。そしてそこにいるミント0号にくっついてしまえば、ローズマリーにふらふらと行かないでしょう?」
そんな私にサトルは、そろそろ頭が痛くなってきたように額に手を当ててから、
「……大体、俺がミント様以外に気を移すなんてありえません」
「サトル……嬉しい」
ミント0号が恥ずかしげに微笑むので私は、
「それで、両想いになるの?」
「「もう少し空気を読んでよ(くれ)!」」
ミント0号とサトルは二人揃って顔を真っ赤にして告げたのだった。




