何、そのフルコース
何でこんな風にすぐ見失うのよと不満に思いながら、私は傍にいたユーマに、
「せっかくいい所だったのに、何で邪魔するの?」
「え? いい所って……空き部屋の密室で男女二人っきり……」
「……貴方との関係はこれで終りね。ローズマリーを逆ハーレムにするために頑張るわ」
アホな事を口走ったので、私はユーマを見限った。
もう面倒だから全員の好感度を上げてローズマリーに、ぽいっと投げつけてしまおうと私は思った。
そんな私にユーマが焦ったように、
「ま、待ってくれ! というか全部ミント、お前のせいなんだからな!」
「……何よ、そんな切羽詰まった声で。ローズマリーが逆ハーレムになったわけでもないんでしょう!」
「そのまさかだ! お前と関わりのある、生徒会長のミナト、忍者のサトリ、病弱なヒュウガ、そして不良のレイが丁度集まっていて、ここでローズマリーと一緒にいればミントが来るかなって取り囲むように、一緒に談笑を始めたんだぞ!」
何、そのフルコースと私は思いつつユーマを見て、
「それで、それでこんな場所にわざわざ来るなんて、貴方は何をしていたの?」
「カモミールがいるから大丈夫だ。そしてお前が爆走していくのが見えて呼びに来た。だってあいつらが探しているの、ミント、お前じゃないか」
「はぁあっ? どうしてそんな展開になったのかしら」
「丁度校門の前で遭遇したんだよ! あ、ミントといつも一緒にいる子だって。まさかその男たち全員が、ローズマリーに恋心を抱いて逆ハーレムになったりしないだろうな!」
ユーマが切羽詰まったかのように私に言うが、ユーマにしては勘が鋭いわねと思う。
思いながらカモミールがいるから大丈夫と言っている当りでこれはもう駄目かもしれないと思いつつ、無駄にユーマを不安にさせても仕方がないので、
「とりあえずは校門に向かいましょう。というか自分のものにしたい彼女なら、私に頼ることなく自分で他の男を蹴散らせばいいじゃない」
「……どうやってもかなわない相手が確実に一人いるんだよ。だからお前をわざわざ探しに来たんだ」
「ふーん、勝負をする前に負けを認めるの? まあ良いけれど、もしもローズマリーを取り合いになったら、戦わないといけないって覚えておきなさい?」
「……分かっているよ」
そうユーマは答えた所で、私はようやく校門の前の彼女達を見る事が出来た。
そして私は、何故ユーマがカモミールにそれほどまでに信頼を寄せているのか理解する。
ローズマリーとカモミール。
二人を取り囲むように彼らは存在しているが、どちらかというとカモミールの影にローズマリーが隠れているようだ。
しかしこの構図何処からどう見ても……そこで私は閃いた。
つまり彼女はある意味で持ってこいの人物なのだ。
とりあえずはカモミールの信頼を得るのと、ローズマリーに少しでも接触しないように話しかけるのが先決だ。
なので私は声をかける。
「ごきげんよう、皆さま」
あ、ミント様が来ただの何だの言って私に集まってくる彼ら。
何かがおかしい気がしたが、どうしたのか聞くと、
「いや、あの“暗黒存在ミント”をここまで変えた女性に興味があっただけだ」
などと腹黒生徒会長ミナトが言い、サトル以外の全員が頷いていた。
どうやら全部私の責任だったらしい。
別な意味でローズマリーが気になったみたいだと、私は自分の失敗を悟る。
そして怒ったふりをしてユーマ以外の男全員をとりあえず教室に向かわせる。
どうにか上手くいったと思った所で私は、ローズマリーが浮かない顔でいるのに気づく。
「どうしたのローズマリー」
「いえ、今度こそは上手くいくかと思ったのですが、ちょっと……」
「色々私も考えているんです」
ローズマリーはそう私に言って、それ以上私に話さなかったのだった。