きりっと、ドヤ顔で
私の目の前で逃走しようとするミント2号の襟首を掴み、私は私の部屋にやってきた。
「放してぇええ」
「はいはい、もう部屋ですから。所でいつもは何処に潜伏していたの?」
「……私の部屋は五つあるんです。その秘蔵の間に潜みながら、貴方の行動を観察していましたわ」
やはり観察していたらしい。
しかもこの広い屋敷だから、
「私が他の部屋を私がうろつくとは思わなかったの?」
「ええ、今日はたまたまちょっと散歩でもしようと油断していただけで、普段は周りの様子を確認して出てきますし、鍵をかけてしまえば誰も入ってこれませんもの。当然でしょう?」
ふんと嘲笑うかのように告げるミント2号。
何だかさっきと雰囲気が違うような……そう、それこそ高慢な悪女風?
なまじ見かけが整っているので、様になっているが、サトルの言っていた言葉を思い出す。
ミントは恥ずかしがり屋であると。
まさか。
私は不安を覚えながら、
「……恥ずかしさのあまり、悪役っぽい行動をしてしまうというわけだったりしないわよね?」
「……冗談でしょう? この私がそんなわけないでしょう? この世界は私に支配される者たちで満ちているの。そう、私は選ばれた人間なのよ!」
きりっと、ドヤ顔で宣言するミント。
身振り手振りまでつけている辺りまで、美少女で優れている分様になっているが、それを私は静かな顔で見つめて、
「それ、やっていて恥ずかしくない?」
「いやぁああああ、言わないで言わないで言わないで」
顔を隠して真っ赤になってしまうミント2号。
それを見ながら私は、
「まさかそれ、悪役キャラをわざわざ演じていたとか?」
「だって、他の人怖いし」
「……だからって、何でそんな事を……」
「そうするとみんな近づいてこないし」
「ついでに中二病も患っているし」
「ぐふっ」
ミント2号が多大な精神的ダメージを受けたかのように倒れた。
どうやら恥ずかしがりやな性格が災いして悪役っぽい行動をとってしまったらしい。
だがそうなると、
「何でローズマリーをいじめていたの?」
「……気がついたら取り巻きが出来て、私が利用された」
「うわ……」
「でもここに来てからはその人たち全員とは縁が切れたので、サトルと二人っきりでやってきたんです」
サトルと言った時にミントがふっと幸せそうな表情をする。
これは……絶対にローズマリーに寝取らせるわけにはいかないような気がすると、私は思う。
けれど現状では、
「何で悪役やっているの? 自分に不利なんだから止めなさいよ。他の人だって傷つけるし」
「分かってます。でもそれを直そうとしても何故か、悪役になってしまって……そういった強制力が働いているとしか思えない。だから今では諦めています。私にはサトルさえいれば良いんです」
ホワンと幸せそうにサトルと呟く彼女にうーんと私は唸ってから、
「そのサトルは、少しでも貴方にその上がり症な性格を直させようとしなかったの?」
「サトルは私の言うとおりにしてくれて優しいですから」
幸せそうに微笑むミント2号だが、私はお前か! と思った。
サトル……ミントが好きだからと甘やかし放題甘やかしてる。
というか、これは甘やかしてはいけない方向だ。
案外頼られるのがサトルには嬉しいのかもしれないが、このままだとミントはひたすら不幸なままになる。
さて、どうしよう、と私は考え、試しに聞いてみた。
「もしも、サトルが寝取られそうになったら、貴方、どうする?」
ミント2号は凍りついたのだった。
明日は、更新お休みです。また、これから六月いっぱい、毎日一話、21:00、更新です。




