ミントvsミント
それから私は、縄を買いにホームセンターへ。
使えそうな道具を一通り確認しつつ、縄を一本切ってもらい購入する。
少し長めにし、射程範囲を長くする。
「確実にあのモブモブ君(仮)も捕まえたいしね。それにもう一人のミントも」
彼女に話を聞きたい。
こちらを観察しているのなら、私がこの世界に来た事その他もろもろも知っているのかもしれない。
捕まえて、是非お話を聞きたいものだ。
そう思いながら私は帰宅して、すぐにロープを持ちながら庭に出る。
ついで家の中に置かれていた白地に青で模様の描かれた高そうな壺を、重い思いをしながら庭に引きずり出す。
外にまで運んでから、そこに台車があるのに気づいて、初めからこれを使えば良かったと私は嘆息した。
そしてその台車に壺を乗せて庭の広い、草原のような場所にやってくる。
ここで一体何をするのかと思っていながら、でもこういう練習をするには便利よねと私は思う。
「……地面に乗せるのも面倒だし、このまま台車に乗せたままで良いか。傍に木と茂みがあるけれど、わざわざ中央に持っていかなくても良いでしょう」
そう思って、そのまま私は少し場所を離れて、縄を取り出す。
それを結んで縛り、輪の形にして縄を引っ張ると閉まる形にする。
「これで良いわね。さてと、後はこれを振り回して……」
カウボーイのように、頭の上でぐるぐると縄を回す。
遠心力がかかっているかな~と思いつつ、ここねっと思った所で私はそれを投げる。
その縄は壺からそれて、茂みの中に入っていく。
このハイスペックミントにしては珍しいと思っていると、
「きゃあ!」
若い女の声がした。
私は、ふふふ、生きの良い獲物が引っかかったわね(棒)と思いながら、それをぐっと引っ張ると、茂みからある人物がロープに捕まっている。
そう、その人物とは……私です!
黒髪美少女がロープで縛られて茂みから姿を現す。
文字にすると危険な響きがあるが、それは遠くに、せいやーと放り投げておくとして。
「あら、こんな所にいらしたの」
ふふっと私が不敵に笑うと、目の前のミント様――私と混乱しそうなので、ミント2号と彼女を呼ぶ事にする――は、涙目になった。
あ、あれ?
悪役ヒロインで超傲慢お嬢様じゃなかったっけ?
ああ、あれだ。嘘泣きかも。
目薬何処かにあるかも……と思った所でロープからミント2号が逃げようとする。
なのできゅうっと引っ張り、ミント2号が逃げられないようにしてから私は彼女に微笑み、
「色々お話を聞きたいのだけれど、よろしいかしら」
「わ、私に何の用なんですか!」
「何の? そうね、色々あるけれど、貴方……ああ、そうね。前にサトルに聞いたわね」
「聞いたって何を?」
ミント2号が私の言葉に食いついた。
このまま一気に吊りあげられるかしらと私は思いながら、
「“私”は恥ずかしがり屋だって事。他には……今日下着売り場で、下着を見ていたわよね?」
「! な、なんで、その時間は本屋に……」
「鞄、預かってもらっていたのよね。その様子だとGPS機能を何か使っていそうね」
「……そこまで気付かれていたなんて。何時気付いたの?」
「今日」
「……」
「朝会ったのと外を歩いていたときたまたま学校の人達数名に会ってね。貴方に会った人がいたでしょう?」
「あの、怖い不良が親しそうに声をかけてきたから、怖くなって逃げたけれど……まさか」
「あ、レイ君可哀想。人畜無害ななんちゃって不良なオタクなのに」
「……そんな美味しいキャラが実在するわけないわ」
その言い回しを聞きつつ、私はミント2号に何となく思い当たる部分もあるけれど、放置することにし、
「とりあえず、家に入ってお話しない? 悪いようにしないから」
「……ばれてしまっては仕方がありませんね」
そう、ミント2号は諦めたように呟きロープから抜け出し、逃げ出そうとしたのだった。