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ミント、増殖中★

 それを聞いた私は深々と溜息をついた。

 ついで自分の所持しているものを鞄の中をあさって確認してから、


「それで、レイ君。私と会ったのは何時ごろかしら」

「? それは三分くらい前だな、ここの二つ隣りのケーキのお店で、声をかけたら逃げるように洋服の店に入っていったから」

「そう。……随分と恥ずかしがり屋なのね。ふーん」


 そこで私は少し黙ってから、サトルに、


「私は前からそうだった?」


 忍者なサトルは沈黙した。

 もう一人の私。

 そしてその存在を隠そうとするサトル君。


 昔話の怪談でもう一人の自分を見ると死ぬらしいのだが、それの亜種としてもう一人の自分が殺しに来るようなものがあった気がする。

 それを私はサトルに警戒されているのか否か。

 私は沈黙し、けれど確認だけはレイ君にしておきたい。


 どうせもう一人のミントは同じ家にいるのだろうから。

 今朝目撃した彼女がそうだろう、というのもあるが根底に私の中であるからそう思うだけだが。

 けれどここで待っているよりも、私は行動することにする。そもそも、


「ミントには友達はいない、か」

「……ミント様?」


 サトルが私に問いかけるが私は答えず代わりに、


「レイ君、この鞄を持ってここで待っていてくれる?」

「何で俺が!」

「今度体育の時に背中を踏んであげるわよ」

「何でもお申し付けください、ミント様」


 レイの扱いはこれで良いわねと思いながら、サトルの方を私は見て、


「少し一緒に来てもらえるかしら」


 そう私は告げたのだった。







 本屋のすぐ傍の洋服屋にやってきた私は、周りを見回す。

 次に上の階に女性ものの衣類のコーナーがあるのを確認して、エスカレーターを登っていく。

 そして周りを見回しながら服に隠れるようにこっそりと進んで、


「見つけたわ」

「!」


 サトルが驚いたように息をのむ。

 けれどすぐに顔を赤くして顔をそむける。

 そこには、私そっくりの……いえ、ミント・鈴木そのものがいた。


 そんな彼女は今何をしていたかとういうと……下着を選んでいた。

 白いレースの付いた下着、ブラジャーとお揃いになっているものを見つつ、次に、挑戦的な黒いレースにリボンのついたものを手に取る。

 サトルがぐふっという声を上げていた。


 そういえば彼、ミントに恋心を抱いていたのよねと思いつつ、そんな彼女が今、勝負に出かけるような下着を選んでいるのである。

 色々と妄想が……。

 そしてちらちら見て顔を赤くしているのがまた……。


 ここでもう一人のミントをもう少し観察していても良いのだが、これ以上ここにいるとサトル君が萌え死にしてしまいそうだ。

 名残惜しいが、目的は達せられた。

 なので私は、サトルに、


「そろそろ行きましょう。彼女の存在に私が気付いていると思われるのは良くないわ」

「……やはり貴方は偽物なのですか?」

「偽物……別の誰かだったような気もするけれど、今はミント・鈴木のようなのよね」

「別人のような気がすると」

「これがSFの世界ならクローン人間に記憶を植え付けて~、みたいな話になるのかもしれないけれど、なんていえば良いのかな。同じ人間が二つに分かれて中身が異なっているような感じかしら」


 この乙女ゲームにSF要素は無い。

 そしてミントが二人いる。

 おかしい話だが、とりあえずは彼女に私は話をしないといけないと思う。


「サトル、そういえば彼女は恥ずかしがり屋だったかしら」

「……ええ」

「知っている限りの彼女の性格などを私に教える気はある?」


 それにサトルは沈黙する。

 まあ、怪しい私なんかに彼の好きなミントの話なんかしないわよねと思って、私は本屋に戻ったのだった。


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