別の服を着た私
さて、次の日に日付が変わったというか、窓の外がが青くなったので大丈夫。
そう思って私は部屋の外を歩いていく。
そして廊下を曲がろうとした所で……直角に曲がったその先から人影が。
「……え?」
そこには別の服を着た私がいた。
寝起きなのかぼんやりとした顔で服装も違う。
確かこの辺りに鏡は無くて……。
「変ね。私疲れているのかしら」
そう私目をつむりごしごしやって、もう一度見るとそこには誰もいなかった。
とうとう幻覚を見るようになったのかと思って、きっとゲームのバグだろうと片づけた。
今日は街に繰り出し、攻略本に乗っているイベント場所をめぐるために歩きだす。
事前に地図を手に入れたから大丈夫だ。
これに沿ってイベントの場所をめぐっていけばいい。
「でもこの攻略本、なんか中途半端だなと思っていたら……題名に、『絶対クリアできる、ネタばれしない攻略本』って書いてあるのよね」
ここは完全攻略バージョンにするべきだろうと私は思う。
だがここで贅沢は言っていられない。
「さあ、行くわよ、全ての戦いは、戦いの前の準備で決まっているものよ!」
そう、私は駆け出したのだった。
家を出ると三毛猫がいたので、それを追いかけながら裏道を使いまず本屋に向かう。
「街の本屋という名の、五階建てのビルで、それが丸ごと本屋。四階にコミックやライトノベルが……これは果たして、町の本屋なのかな……」
普通もう少し小さいんじゃないかという気がしたのだけれど、ゲームには夢と希望が詰まっているものである。
そして私は中に入ってエスカレーターを登る。
暑くなってきているので少しクーラーが効いていた。
まずは五階まで登って一回まで大まかな間取りでも見ておくかとエスカレーターを登っていくと、下りのエスカレーターにこの前のオタクの不良なレイ君が下りて行く。
たまたま目があったから手を振ると、お前っという声がしたが、私は無視して五階まで登って行った。
五階は参考書などが並んでいる。
そこで、エスカレータを駆けあがる音がした。
「危ないから走らない方が良いわよ?」
「何でお前がここにいるんだ!」
「何でって……下見?」
けれどそれを言った瞬間、レイ君が凄く嫌そうな顔をした。
こんなににこやかにこの私が微笑んで接しているというのに、その時点でぼうっと見とれなさいよと思いつつ、攻略対象キャラだから聞かないのかなとも思う。
これは結構重要な情報じゃないのかと私が思っていると、
「今度は一体何をたくらんでいるんだ」
「私もいちいち何かを企むほど暇じゃないのよ。本を見に来ただけ。それなのにそんな事を言うなんて……酷い」
「何がだ何が。そもそもさっきケーキ屋の前でじっとケーキを見ていたくせに、声をかけたら逃げやがって」
「それこそ何の話よ。私はケーキ屋の前になんて言ってないわよ。猫を追いかけてこの本屋に来ただけだし」
「お前みたいな美少女を見間違えるわけないだろう」
言い切った彼に、私はうーんとちょっと呻いてから、
「そういえば貴方以前、サトルも私を探る仲間になっていると言っていたわね」
「それはまあ……」
「……となると、サトル、いる?」
「ここに」
私が呼ぶと何処からともなくサトルが現れる。
それにレイがギョッとしているが放っておいて、私は問いかける。
「聞きたいのだけれど……一昨日の朝の授業の間、私は何処にいたか分かる?」
今朝のもう一人の私が見間違えでなければ、もしかしたなら説明がつくかもしれない。
それを期待して聞いたのだが、そこで彼は、
「ミント様は、校舎の屋上におられましたよね? 珍しく授業をサボっていたはずです」
そう、彼は答えたのだった。