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新婚さんか何かのような状態

 その後、私の作ったクッキーをみんなで食べた。

 あらかじめ作って置いたアイスティにシュガーシロップとミルクを咥えて、アイスミルクティにして皆で飲んだ。

 けれどそれよりも私の作ったクッキーの方が絶品だったようで、みんな黙々と食べている。


 私も実際に味見をしていたが、何というか……私の作ったものよりも凄く美味しい。

 サクッ、ほろっとしたクッキーに、先ほど混ぜ込んだマカデミアナッツの味がする。

 何だろうこの敗北感。

 私が作ったのだけれど、私のものより美味しくて、いや、でも作ったのは私だし……。


 悔しいような嬉しいような良く分からない感覚に苛まれ、結局、美味しいものには勝てなかったので深く考えないようにした。

 いちいち考えても仕方がないし。

 そして折角なのでユーマの料理の腕前を見る事になった。


「ユーマ、私達のお昼を作りなさい! ご飯はたいてあるわ!」

「なんでだよ! 横暴すぎるだろう! ミント」

「貴方、私にそんな事を言っても良いのかしら」

「な、何だと?」


 びくっと震えるユーマに私はかかったと微笑み、声をひそめて、


「とりあえずローズマリーには食事を作る能力がないのが分かったわ。でもここでユーマ、貴方が食事を作ったらどうなると思う?」

「ど、どうなるんだ?」

「……女性の間で、男を落としたいなら胃袋を落とせというのを知っているかしら?」

「……聞いた事があるような。それがどうしたんだ?」

「いい、ここで美味しい料理を作ってローズマリーを感動させたなら、『私、毎日ユーマ君の料理が食べたいかも』という、新婚さんか何かのような状態に進めるかもしれないのよ!」

「な、何だと……」

 

 こうして私はユーマを上手くそそのかしました。

 そしてやる気満々のユーマは、手際良く野菜を切り……以下略。

 お味噌汁に焼き魚に浅漬けという和風の昼食を作りあげた……のだけれど。


「困った、私は魚が嫌いでね。卵か何かはあるかな?」

「そういえば……そうだったな」


 今更ながら思い出したらしいユーマ。

 随分と深い仲なんだなと思いつつ、何処で知り合っていたんだろうと疑問に思う。

 そして何故か魚をユーマが二つ食べる事になり、そして私がミナトの卵焼きを作る事になった。


「何で私が作るのよ……あ、先に食べていていいから」


 そう告げてローズマリー達に先にご飯を食べさせる。

 ローズマリーやカモミールが美味しい美味しいと言っていて、ユーマは嬉しそうだ。

 うむ、ローズマリーの好感度はアップしているわねと思いながら、私は出汁のきいた中はとろとろ半熟の卵焼きを作ってミナトに渡す。


「ほら、これで良い?」

「ありがとう。昔食べたミントの卵焼きは美味しかったからな」


 そんなイベントがあったのかと思いながら私は、まあ、喜んでいてくれているなら良いかと思う。

 こう、素直なら私だって……。

 そこで、何か墓穴を掘りそうな気がしたので私は考えるのを止めたのだった。






 そして彼らを送り出した後、全く私は一体どこまで暗躍しないといけないのかしら、と一言つぶやく。

 結局私の作ったクッキーを、みんなにお土産として渡した。ついでに、


「これでもう少し私を信頼してもらえると嬉しいのよね? カモミール」


 そう囁くと、まだ疑いが晴れたわけじゃないと彼女は答える。

 それはゆっくり崩していけばいいなと私は気楽に考えながら、ベッドに横になり攻略本を見ていた。


「明日は学校外のイベントが起こりそうなところを回らないとね。出来るだけそれを避けたいし。ああ、後ロープも買ってこないと」


 そう私は小さく呟いて、朝になるのを待ったのだった。

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