ぽーてーとちっぷす
そんなこんなでローズマリーの横で奮闘する私だが、そこでミナトが近づいてきて、
「マカデミアナッツと抹茶のクッキーが私は好きなんだ」
「はいはい、作ればいいんでしょう、作れば」
「ミントは、料理だけは素直に美味しいから褒められる」
「何よ、私のこの美貌は誉められないの?」
そこで腹黒生徒会長なミナト、ふっと皮肉げに笑い、
「その美貌で、どんな男でも落ちて女は憧れで従うと思っているのが褒められると思うのか?」
「へー、美人は得ね。じゃあこの美貌で世界征服でも企んでみようかしら。微笑むだけでバタバタ男が落ちるみたいだし」
「……だから“闇暗殺者ミント”といわれるんだ」
また新しい二つ名が飛び出した。
私の二つ名一覧をそろそろ作るべきなのか悩みながらも、さらに饒舌にミナトは話していく。
「そもそも彼女もちの男もミントに夢中になって別れたり、その寝取られのような目にあった女もミント様~な風になったりと混沌としていたからな」
「……そろそろカオスな話は止めて、別な話をしましょう。そういえばミナトはどんな和菓子が好きなの?」
「まあいい。ユーマもローズマリーをはらはらしながら見ているし、カモミールも同様だ。話し相手がいないからミントとしようか」
言い草は気に入らなかったが、話が変わったので私は良しとする。と、
「そうだな、だがもう少しすれば、水ようかんや葛桜が美味しいか」
「そうよね、暑くなってきているからそういった水分が多くてつるっとしたものが恋しいわよね」
「緑茶と一緒に頂くと美味しいな」
「抹茶でも良いんじゃない? 甘いお菓子を食べてからなら苦みもそれほど感じなくてむしろ美味しいし」
「そうだな。……今度は皆で和菓子やで菓子を買ってきて楽しむのも良いな。今は桜餅やもうすぐ柏餅の時期だったから」
ミナトがそういうので私も良いわねと思いながら、クッキーをコネコネして……私は気づいた。
今は、桜餅やもうすぐ柏餅の時期?
それは5月……もしくは4月の話じゃないのか?
この完璧っぽい生徒会長にしては珍しいミスだが、妙に私の中で引っかかる。
とはいえ引っかかった所で、それがどうというわけではなく私は目の前の事に集中する。
混ぜてコネコネしたクッキーの生地をそれぞれラップに包んで冷蔵庫に寝かせる。
丁度ローズマリーもコネ終わったので一緒に冷蔵庫に入れる。
何故かカモミールとユーマとミナトが必死になって、どちらが何処に置いているか分かるようにと念入りに言われてしまった。
そこまでトラウマになるようなメシマズだったのかと思いつつ、あらかじめ作って冷やしておいた大量のアイスティを注いで、全員に渡し、
「折角だから手作りポテトチップスも作ろうと思うの。薄くスライサーで切って揚げるだけだからそんなに難しくないのよ」
「あー、あれ美味しいよな。薄いのに芋の風味がして。塩もそんなに使わなくても美味しいし」
私が言うとユーマが同意する。
私はなんだか不思議な言葉を聞いた気がして、
「ユーマ、貴方料理が出来るの?」
「……まあ、親父が壊滅的に作れないから。日常で食べるような料理は一通り、な。親が離婚して以来ずっとそうだ」
なんか不味い事を聞いてしまった気がした私。
なので私はそれ以降は黙って、ジャガイモの皮まで綺麗に水洗いしてそのままスライスし、揚げていったのだった。




