第一次、メシマズ事件
さて、本日は休日。
ローズマリー達がやってくる日である。
私はお金持ちな割には普通っぽいキッチンで材料と道具を用意する私。
そこで私は材料の中にマカデミアナッツがあるのに気づく。
「あれ、これ、私は頼んだかしら」
「はい、ミントお嬢様に言われたものを取り揃えました」
淡々と答えるメイドに私は、無意識の内に告げていたようだ。
ただあっても困るものではないので受け流し、更に準備を整えて行く。
ついでにネットからコピーしたクッキーの作り方の分量をプリントアウトしたものを人数分用意するが……。
「男達は頼りになるのかな?」
ユーマは脳みそ筋肉っぽいし、腹黒生徒会長のミナトは塩を砂糖で中和しそうなイメージだ。
だがそれはあくまで私のイメージであって、実際に二人は料理はお手の物かもしれない。
などと考えている内に来客だ。
私服姿の四人、ローズマリー、ユーマ、カモミール、ミナトがいる。
ちなみに丁度ミナトが最後に来たらしく、皆に会挨拶しているが……何故かユーマの様子がおかしい。
こう、ミナトから視線を逸らそうとしているかのようだ。
それがミナトも分かっているのか苦笑して、
「息災に暮らしているか?」
「それは……まあ」
「そうか、良かった」
などと話している。
どうやら昔からの知り合いのようだが、一応、ミナトと幼馴染設定のある私だがよく分からない。
攻略本にも特に何も書かれていなかった。なので、
「ユーマとミナトは昔からの知り合いなの?」
「あ、それは……」
「言うな、ローズマリー」
問いかけた私に答えようとしたローズマリーだが、珍しくユーマが機嫌悪そうにローズマリーを止める。
そしてミナトもそんなユーマに苦笑しているようだ。
この二人の間に何があるのか。
後で攻略と関係があると面倒なので、攻略本をよく読んでおこうと私は決める。
ユーマは上手く操作できるが、私はミナトは何となく苦手なのだ。
そしてキッチンにやってきた私は材料を説明して、
「まずはローズマリー、一人でやってみなさい。作り方は分かりやすい物があるから」
「はい! 頑張ります!」
材料は沢山あるのでちょっと失敗しても大丈夫な量である。
そんな彼女を見ながらカモミールが私に、
「貴方が言いだしたのだから、貴方が責任を持ってね」
「……でも、この材料は普通の……いえ、普通よりも上等なものばかりよ? しかも私が用意したのだから変なものが混入するはずもないし」
「……そう。所で貴方もクッキーを作るの?」
「ええ、そうだけれど、何? 私の作ったお菓子が食べたいの?」
「そうね、以前調理実習の時に作った貴方のお菓子は極上だったから」
「そう? じゃあ腕によりをかけて作らせてもらうわね」
美味しいと言ってもらえるなら作りがいがあるものだ。
そこでカモミールが微妙な顔をした。
何でだろう、私は変な事を言ったかなと思って……思い当たった。
「まさか、私が作ったものなのだから美味しいに決まっているでしょう? ああ、ごめんなさいね、貴方達庶民には上等過ぎるものかしら、とか言うと思ったとか?」
「言うと思ったというよりも、言っていたじゃない」
カモミールが溜息をつくかのように言う。
何、その悪役っぽい台詞と私は思いつつ、そうか、今は私なんだと思った。
このイメージを払拭するためにも、これから頑張らないとなと思いつつ、私もクッキーを作り始めようとして……。
「所で他のユーマ、ミナト、カモミールは作らないの?」
「私達は食べる専門なの」
カモミールが言いきって他の二人が頷く。
色々と突っ込みたかったが、話が進まそうだしそんなに沢山作っても仕方がないので、私は一人クッキーを作り始めたのだった。




