タダノヘンタイサン
結局モブモブ君(仮)を取り逃がしてしまった私。
理由はローズマリーに呼ばれたからだ。
なので、無視するわけにもいかず、私は彼を諦めざる終えなかった。
「やっぱり、丈夫なロープは必需品ね」
ぽつりと呟く私だが、周りの誰も聞いていない。
正確には皆、ある事に夢中になっていたからだ。
「うう、やっぱり恥ずかしいよ」
「でも、ローズマリーには似合っていると思う!」
結局ゴールにまで辿り着けなかったローズマリーは、ネコミミとしっぽをつけさせられていた。
白い猫ちゃんの耳としっぽで、ローズマリーには意外に似合っている。
そしてそんな姿のローズマリーを見て、ユーマが何処となくはしゃいでいる。
ちなみにカモミールはゴールまで辿り着いたので猫耳などは付けていない。
そこでローズマリーがむっとしたようにユーマを見る。
「ユーマ、何だか嬉しそう」
「そ、そんな事は無い」
「うそ! 私が途中で脱落して嬉しいの?」
「ち、違う、俺は別に……」
うーむ、雲行きが怪しくなっているわねと私は思いつつ、
「ユーマは猫耳を付けたローズマリーがあまりにも可愛くて照れているのよ」
「え?」
「て、照れてないし。確かに可愛いと思ったけれどそれだけだし!」
疑問符を浮かべるローズマリーに、必死で抵抗をするユーマ君。
そんなローズマリーに私は、
「そうね、ユーマが照れているわけじゃないって言っているから、ローズマリー、折角だから試してみましょう」
「な、何をですか? ミントさん」
ユーマが何をする気だという風な表情でこちらを見ているが無視をして、
「ローズマリー、いい? こう、上目遣いでにゃーんと言ってみなさい」
「こう、ですか? にゃーん……」
上目遣いで甘えるように見上げる好きな彼女が、猫耳を付けてにゃーんと言っている……しかも今は体操服というマニアックなものだ。
さて、どうするユーマ、と私が見ていると、ユーマはくるっと踵を返していずこかへと走り去って行ってしまった。
どうやら、KENZENな彼には刺激が強すぎたらしい。
「そんなに変だったかな」
ローズマリーが悲しそうに呟くので私が、
「あれは可愛過ぎて逃げて行っただけ。そうよね、カモミール」
「ええ」
先ほどから私達の様子を観察していたカモミールが同意する。
それにローズマリーは複雑そうながらも、少しだけ嬉しそうに微笑んだのだった。
そして授業を終えて着替えた放課後。
私は似非不良なレイ君に呼び出されていた。
「何かご用かしら」
「秘密を握られてはいさようならというのも不安だ」
「……だったら聞かなければいいでしょう?」
「あれだけもったいぶられて不安になるなという方がおかしいだろう! 相手はあのミントだし!」
「うーん、じゃあ、お手伝いしてくれる?」
「手伝い? 何の?」
「あのユーマとロ-ズマリーをくっつけるお手伝い」
「よし分かった! ゲームで鍛えた俺の力を見せてやる!」
自信満々な彼に私は、
「……やっぱり手伝わなくて良いわ。不安だし」
「な、なんだと!」
「だったらそのスキルを生かして自分の彼女でも捕まえてきなさい」
「う、人が気にしている事を……」
「まさか未だに私の足で踏んでもらうのを諦めていないってオチじゃないでしょうね?」
レイ君は黙った。
ドウヤラタダノヘンタイサンダッタヨウダ。
「さようなら」
「ま、待ってくれ、本当に素晴らしい足なんだミント様!」
「……マッサージ代わりに背中を踏んであげるくらいなら良いわよ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「その代り私が指示を出す通りに動いてね」
でないとどんな変な動きをするか分からないしと私は嘆息して、その日は彼と別れて家に帰ったのだった。




