ネコミミ、付けたかった
新たな協力者を手に入れた私は、困っていた。
正確には、彼との関係はこのくらいにして時々、保健室にお見舞いにいく程度に仲良しになっておくくらいが私には丁度良かったのだ。
正直、ローズマリーとの関係にフラグが立つのは困る。
そう私が悩んでいるとそこでユーマが、
「その、手伝ってくれるのか?」
「はい! そういった他人の恋を応援したくなる気持ちも僕には分かります」
「……なんか、良い人だな」
ユーマがヒュウガに落とされている。
私は、このままなし崩しに逆ハーエンドに向かったらどうするのよと心の中で思いはしたが、そこで私は気づいた。
「ヒュウガ君はユーマとローズマリーの仲を応援しているのよね?」
「そうです」
「ローズマリーを寝取ろうとか、そんな事は考えていませんよね?」
「何故?」
きょとんとしたヒュウガ君に私は、そういえばフラグが立っていなかったと思いだす。
つまり、好感度上昇イベントが存在していないのだ。
故に、ヒュウガ君にとってはローズマリーはその他の女子生徒と同じなのだ。
そして彼は私が、ユーマとローズマリーをくっつけようとしているのを知っている。
その情報がローズマリーに伝わる危険を考えるなら、仲間に抱き込んでしまった方が都合が良い。
しかも手伝ってくれるならば人手が多いのも何かと重宝するだろう。
「そうね、じゃあ手伝ってもらおうかしら」
「はい! 頑張ります!」
といったように仲間がまた一人増えたわけだが、そこで、
「おーい、次の集団が行くから全員降りてこい!」
そう体育の先生が私達を呼んだのだった。
倒れている生徒の回収を行い、やっぱりこれは難易度が高かったかなとその体育の先生が告げると、そのアスレチックから機械音がして、少し全体的な難易度が下がっていく。
そして、回収された生徒には、罰としてネコミミやらウサミミやら、イヌミミとしっぽが付けられていた。
誰の趣味だと思いつつも、私は付ける機会がなかったので、傍から見れば良かったと思われるだろうが、
「……ネコミミ、付けたかった」
「付けたかったのか……」
何故が驚いたようにユーマが言う。
もしかしたならミントというキャラは、下賤な畜生のような耳を、この私が付けるわけないでしょう? と言っていたのかもしれない。
考えて言ってそうだなと私は思った。
けれどそういった特殊性癖があると思われるのは何となく嫌だったので、
「だって私は美少女だし、絶対に似合うと思うの。そう思わない? ヒュウガ君」
「はい! ミント様は絶対に似合うと思います」
「でもヒュウガ君はイヌミミが似合いそうよね」
「……男が獣耳つけても嬉しくとも何ともないかと」
ヒュウガ君が真顔で私に言い返してきた。
そうかな、これだけ可愛ければ似合うんじゃないかなと思った所で、傍にいたユーマが、
「あ、ローズマリーが転びそうだ。がんばれー!」
それにローズマリーも頑張るとユーマに答えている。
もうお前ら結婚してしまえ、と私は思いつつ、私はある事を思いついて悪魔のような頬笑みを浮かべる。
それに気付いておらず懸命にローズマリーを応援しているユーマに私は囁いた。
「ローズマリーが途中で脱落すれば、ネコミミ」
「うっ! そ、そんな誘惑には乗らないぞ!」
「ローズマリーがネコミミとしっぽを付けて、恥ずかしそうに失敗しちゃったと……」
「聞こえん、聞こえんぞ!」
「この機会を逃したら次の機会なんて巡ってくるかどうか……」
「う、うう……そ、それでも俺はローズマリーを応援する!」
「そう? じゃあ頑張ってね」
ユーマが恨めしそうに私を見た。
なので今度はローズマリー達も誘ってコスプレ大会も良いなと私が思った所で、
「ミントさん、いや、ミント様だったか?」
そんな軽い声が、私の後ろから聞こえたのだった。




