今すぐ告白してこい、このへたれ男
「ああ、敗北を知りたい」
その謎アスレチックの頂点に立った私は、そう一人呟いた。
けれどそれを聞いたユーマが、
「俺に負けたじゃないか、ミント」
息を切らしながら得意げに言うユーマ。
先ほどローズマリーに手を振ると、手を振り返してもらえたのでものすごくご機嫌だった。
傍から見てもどちらも好意がただ漏れなので、さっさとくっつかないかなと私は思ってしまう。
それでもくっつかないのは恋愛の醍醐味というか、話を続けるための大人の事情というか……でもまだ告白もデートすら経過していないのに、いきなり恋人同士は無理か、と納得する程度の乙女心が私にはある。
その内皆で遊びに行きはぐれてしまい、ユーマとローズマリーの二人だけになってデートをする羽目にというイベントを画策しないといけないかもしれない。
それとも攻略本にそういったイベントがあらかじめ設定されているだろうか。
どこまでが自由度があるのかをその内確認しないとと私は思う。そこで、
「そうやって負け惜しみを言おうが、俺の勝利には変わりない!」
「……もしかしてユーマって、私にコンプレックスか何かを持っていたの?」
そういえば運動神経が良いのが取り柄だった気がするユーマだ。
なので私がの身体能力にライバル意識でも持っているのだろうかと私が思っていると、
「いつもいつもいつも、俺を追い抜いて、『愚かな男ね』と俺よりも先にゴールして嘲笑しながら言ったじゃないか! おかげでローズマリーに良い所を見せられなかった俺の気持ちが分かるか!」
切実な思いをユーマにぶつけられて私は、何をやっているんですかミントさん、いえ、今は私だけれどと思いつつ、
「過去の事はお互い水に流しましょう」
「何を言うんだ何を! だが、今回は俺が勝利した! ローズマリーだって嬉しそうに手を振ってくれているし!」
自信満々な所が少し思う所もあるのだが、好きな彼女のために頑張っているユーマには好感が持てたので私は黙っていた。
けれどそこで私の背にいたヒュウガ君が、
「すみません、僕が足手まといなばかりに、ミントさんを負けさせてしまいました」
「いえ、ヒュウガ君は関係ないわ。だって私、最後の方でわざと走る速度を落としたし」
「「……」」
ヒュウガ君とユーマが黙る。
そしてユーマが震えるように、
「ま、負け惜しみだ」
「……傷つくだろうと思ったから言わなかったけれど、私、息が切れてないでしょう?」
「う、く、憐れみなんていらない! 絶対にその内ミント、お前に実力で勝利してやるんだからな!」
「そんなもの私にとってはたいした問題じゃないわ。だいたいローズマリーに良い所を見せれたんだからそこで満足しなさいよ」
「でも、男としてのプライドが、こんな八百長の勝利なんて……」
「……そこまで何で真面目なのよ。上手く利用できる部分は利用していきなさいよ」
「でも、俺、ローズマリーを自分の力で手に入れたいし」
「だったら今すぐ告白してこい、このへたれ男」
「! 出来ないからこんな風になっているんだろう! うう……そうだよな。俺のために動いてくれたのにこの言い草は無いよな」
「そうよ、もっと私を褒め称えなさい!」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
ユーマが恥ずかしそうに私にお礼を言った。
何だかんだでユーマも素直でいい子ではあるんだよなと思っているとそこで、
「そのユーマさんとローズマリーさんの恋のお手伝いをミントさんはしているのですか?」
ヒュウガ君が聞いてくるので、そうよと私が答える。
そこで彼は少し黙ってから、
「あの、そのお手伝いを僕にもさせてもらえませんか?」
ヒュウガ君は私に言ったのだった。