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からくり屋敷のような

 先生にヒュウガ君、も体育に出させてもらえるよう私はお願いしに行った。

 ホストと見紛うような体育教師ではなく、筋肉ムキムキのおっさんといった容姿をしている。

 ただ明るく人の良さそうな雰囲気のその先生は、それを私が言うと難しそうな顔をして、


「……今日の合同体育はハードだぞ」

「ヒュウガ君が倒れたなら私が責任を持って、保健室に連れて行きますわ」

 

 その私の答えにヒュウガ君がすぐ傍でむっとしたような顔をするが、視界の端でその表情を見ていた私は、怒った顔もやっぱり可愛いと心の中で叫んでいた。

 とはいえ、今日はヒュウガ君に私は付きっきりになり、ローズマリー達の傍にはいられない。

 遠目から確認するに、ローズマリーとユーマ、カモミールが一緒に談笑している。


 フォローできないから上手く立ち回ってよね、ユーマと私は心の中で応援する。

 そこで私は気づいた。

 明るい茶色にピアスをした、何処となくチャラい感じの男を。


 彼は確かにローズマリーの攻略対象だが、今回のイベントでは接触してこないはずなのだ。

 だって、このヒュウガ君を慰めるローズマリーに彼は気になって、声をかけてくるのだから。

 けれど彼はローズマリー達の方をじっと様子を窺うように見ていて……その視線の先にはカモミールがいる。


 こちらからは背を向けているので表情は分からないが、嫌な予感がすると私は思う。

 そこで彼はくるっと私の方を見て意味深に笑う。

 それが何処かあざ笑うようなものに見えて私はむかっと来る。


 いいわよ? 喧嘩を売るなら買うわよ? そう私は思った所で、体育の先生が叫んだ。


「授業を始めるぞ! 全員校庭から避難しろ!」


 避難? と私が疑問符を浮かべた所で、歯車がきしむような大きな音が聞こえて、校庭が二つに割れた。

 中には何かが収納されるようなスペースがあり、そこから何やらはみでてくる。

 尖塔のようなものや、ロープで超える川のような場所、つり橋のような何かが詰まった、からくり屋敷? といったようなアスレチックの集合体のようだ。

 それこそTVですらもやらないようなハードなものだった。


 茫然とそれを見ていた私は、すぐに、誰がこんな設定を入れた! 責任者でてこい! と思って、そして傍にいるヒュウガを思い出して、


「ヒュウガ君、これはきつすぎる……」

「……すごい、こんなのやりたかったんだ」


 そこには目を輝かせるヒュウガ君がいました。

 こんな彼を止める事は出来るだろうか、そう思った所で体育の先生が、


「健全な精神には健全な肉体からだ! 一番初めの挑戦者は誰だ!」

「俺が行きます!」


 即座に反応をしたのはユーマだった。

 ローズマリーに良い所を見せたいのだろう、そしてかけて行く彼は意外に運動神経が抜群というか、簡単に攻略していく。

 ローズマリーがはらはらしたように見守っているので、本当はそっちの様子を見てにまにましていたかったのだが、ヒュウガ君がやる気を出していたので私はあきらめた。

 

 そしてこっそり攻略本を取り出そうとして、攻略本は……しまったロッカーの中だ! と気付いた。

 仕方がないので私は、ヒュウガ君を連れてそのからくり屋敷に挑む。

 案の定、初めの方でギブアップしたヒュウガ君だがこのまま降りるのも危険だったので、


「ほら、私の背に乗って」

「え?」

「おぶったままここをクリアするから。少しくらいは体育を楽しみたいんでしょう?」


 これが体育かどうかは私には疑問だったが、そこでヒュウガ君は頷いて、


「ありがとう、ミントさん」

「いいのよ、私は運動神経抜群だもの」


 そう答えて私はヒュウガをおぶったまま駆け出す。

 途中でギブアップした生徒達をしり目に私は次々と難関をクリアして、先頭を走っているユーマに追い付き、


「じゃあね、おっ先に~!」


 追い越した。それにユーマが、


「おい、ミント、ちょっとは俺に花を持たせるとか……」

「勝負に妥協は許されないの、私も心苦しいわ」

「嘘だぁああ、というか、負けて堪るかぁああ」


 ユーマが必死になって私を追いかけてきたのだった。


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