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応援したくなっちゃう!

 ヒュウガ・如月君。

 病弱薄幸美少年という素敵なキャラだ。

 陽の光に透ける金髪に、物憂げな表情、何処か中性的に見える整った容貌。


 そんな彼がいま真剣な表情で歩いて来ていた。

 病弱な彼は体育を受けるのは止められているが、今日は意を決して校庭に出てきたのである。

 そして、本来悪役であるミントが彼に近づき、


「病弱な貴方がこんな場所いても、他の方々に迷惑だと思いませんの?」


 と言うらしい。

 らしい、というのは攻略本に書いてあったからであり、私自身まだそこまでゲームを進めていなかったからだ。

 私は本当に初めの方しかやっていないのね、と思いながら……何で一番初めのタイトル画面からこの世界に飛ばされないんだろうと思った。


 中途半端にゲームを進めた所で、こちら側に連れてこられている?

 それともその時突然に何かがあった?

 そこまで考えて私は怖い想像が過ったので止め、目の前のターゲットに一瞬で恋に落ちる頬笑みを浮かべる。


 平伏せ! 愚民共!……といった悪役じみた台詞が私の脳内を駆け巡るが、少し離れた場所の男女共の頬を赤らめて私が命じたら平伏しそうだった。

 もしかして私、今のままだと顔だけで相当な人生イージーモードなのではないだろうか。

 しかも頭も良くて身体能力も優れて……これで性格が悪くなければ完璧な超人じゃないのか?


 けれどこのゲームの主人公を乗っ取るのも面倒臭いというか、主人公はローズマリーなので彼女にくっついていた方が安全なのだ。

 やる事は変わらないと私は決め、目の前で頬を染めて見とれている目の前のヒュウガに目を移す。



「ヒュウガ様、今日はどうされたのですか?」

「……! ご、ごめんなさい。凄く綺麗な笑顔だったので……えっとあの、ミントさん、ですよね」

「ええそう。それで病弱な貴方がどうされたのですか?」

「僕……僕も皆と一緒に運動をしたいんだ!」


 はっきり告げる美少年なヒュウガ君に、何時も病弱な子が一生懸命になる光景とか最高! 応援したくなっちゃう! と心の中で私は思いながら、


「では、先生方に、もし倒れてしまってもすぐに対処出来るようにお願いしておかないといけませんね」

「……大丈夫です」


 意地を張ったように、ヒュウガ君が私からそっぽを向いた。

 男相手に可愛いというのは失礼な気がするが、はっきり言って私の目から彼を見ると可愛い。

 これは年上のお姉様に可愛がられて遊ばれてしまうタイプだわと私は心の中で笑いながら、


「仕方がありませんね。私から先生にお願いしておきますわ」

「! い、いえ、ミントさんのお手を煩わせるわけには……」

「折角頑張ろうとしているのですもの。応援したくなりますわ。それに、一人で先生にお願いするよりは二人でお願いした方が聞いて頂けると思いましてよ?」

「それは……そうかもしれませんけれど」


 ヒュウガ君は悩んでいるようだった。

 けれど時刻を見ると、後、5分ほどで合同体育が始まってしまう。

 悩んでいる時間はあまりない。

 なので私はヒュウガ君の手を握り締め、


「では行きましょうか。授業が始まってしまいますし、丁度先生がいらっしゃったようですから」

「……はい」


 それに恥ずかしそうに俯くヒュウガ君。

 そんなヒュウガ君の手を引き、私はさりげなくローズマリー達とは別方向に誘導していく。

 よし、これでまた一つフラグをへし折ったと心の中で私はガッツポーズをとる。

 けれど、すでにまた一つ事態が動いている事実に、この時、私は全く気付いていなかったのだった。

 

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