表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/84

最優先捕獲目標

 校庭に向かった私は、そこでローズマリーと同じクラスだった最優先捕獲目標、モブモブ君(仮)の存在に気付いた。

 彼もすぐに私の存在に気付いたようで、ひくつきながら一歩後ずさり、そのまま駆け足で逃げ出す。

 けれど私は逃がすつもりはなく、


「モブモブ君(仮)、ここで会ったが百年目! 今すぐ捕まえてあげるわ!」

「いやぁああああっ」


 そのまま私はモブモブ君(仮)を追いかけて行く。

 私は両手を直角に曲げながら砂煙を上げて爆走するが、モブモブ君(仮)は更に速い。

 途中石にでも躓いてくれないかしらと思うが、そんな都合のいい事は起こらなかったので私は、


「抵抗は無意味よ! 今すぐ止まりなさい!」

「嘘だぁああ、絶っ対に嘘だぁあああ」


 悲鳴を上げるモブモブ君(仮)に、往生際が悪いわねと私は追いかける。

 傍にいた生徒が、美女な悪女で有名なミント様が得体のしれない目立たない男子生徒を追いかけまわしているとざわめいている。

 そんな好奇の視線を受けながら、私はそれらを無視する。

 このモブモブ君(仮)を捕まえる方が私には、大切な大切な作業なのだ。


「おほほほほ、そんな速度で私から逃げられると思っているのかしら! 速さが足りないわね!」

「うわぁああああ」


 更に悲鳴を上げるモブモブ君(仮)を、奇声を上げながら追いかける私。

 獲物を追い詰めるようなそんな感覚が最高だわと、私は思いつつ走る。

 気付けば回りの生徒が、ミント様に追いかけ回されるなんて彼は一体何をやったんだと戦々恐々と見守っている。


 完全に見せものだなと思っていると校庭から校舎裏にモブモブ君(仮)は逃げようとしたが、私は更に速度を上げて、校庭に面した校舎の壁にモブモブ君(仮)を追い詰める。

 壁を背に震えるモブモブ君(仮)。

 ああ、ようやく追い詰めたわと私は笑み、ゆっくりと彼に近づき、


「ふふ、私から逃げるなんて、いけない子ね」

「ひぃ!」

「私の言う通りに良い子にしていれば、こんな事にはならなかったのにね。さて、どう料理してあげようかしら」

「あ、あの、僕、ただの一般市民です」


 攻略本だなんだ聞いてくるわ、他にも瞬間移動するわ、明らかにこの世界の住人としてはおかしいくせに、白々しい言い訳をするモブモブ君(仮)。

 これからじっくりたっぷり、搾り取ってあげましょうと、全部(から)になるまでねと、手に入る情報を思い描いて笑う私だが……そこで私は気づいた。

 柔らかな金色の髪、正確にはクリーム色の髪に紫色の少年、ヒュウガ・如月が校庭に向かっていく。


 その先にはローズマリーがいる。

 このまま彼と接触させるのはまずいのに……ユーマはどうしたと、私は見回す。

 よく見ると丁度走ってこちらに来る所で、位置と速度から辿り着く前にローズマリーが接触してしまう。


 私が今から走っていけば、あの、ヒュウガを止められる。

 だがせっかく追い詰めたこのモブモブ君(仮)を逃がす事になるが、


「……モブモブ君(仮)はまたの機会でも捕まえられるか」

「そ、そうですよ、是非そうして下さい」

「次は逃がさないわよ?」

 

 そう彼に宣言してびくびくと怖がらせた後、私はそのヒュウガに向かって駆け出す。

 次は投げ縄を用意しよう、と決めながら。

 そして、校庭に近い草むらに差し掛かったところで私はヒュウガの前に躍り出て、


「こんにちは、ヒュウガ様」


 一目で恋に落ちてしまいそうな、鮮やかな笑みを私は浮かべて微笑んだのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ