まず、状況を整理しよう!
まずここで、私の今現在の状況を三行で説明してみよう。
①私は気がつくと、乙女ゲームの世界の悪役ヒロインになっていた。
②しかもまだこの乙女ゲームのクリアをしていなかったから、どうするのよ! と叫んだら攻略本が空から降ってきて、上を見た私の顔にぶつかった。
③現在、悪役側から正義側に移る為に努力中。←今ココ
そんな理由から、私は現在、このゲーム中のヒロインを探していた。
何故かといえば、
「ようはそのヒロイン側にくっついておけば悪役にならずに済む、という事なのよね」
私は攻略本を開き、中身を読みながら歩く。
現在私は、このゲームの舞台である学園の廊下を歩いていた。
目指すは、一年三組。
ヒロインのいるはずの教室である。
正直、どうしてこんな場所に私が連れ込まれたのか分からないが、言う事を聞いて悪役をやってやる義理は何もない。
私がこの乙女ゲームの世界にいるのか理由を説明できる相手がいるのかどうかは分からないが、とりあえずはこの世界に私が存在しているのは事実。
ならば、ここに残る羽目になっていても悪役にならずにいた方が良いだろうという私の判断だ。
もっとも、ここに残らないといけないと思うとぞっとするけれど。
そんなわけで私は、正義側のヒロインについておいて、楽してこの世界を攻略しようと考えた。
だってそうでしょう? ヒロインとなる彼女は、友人や彼氏……というか、男性にモテモテ逆ハーレムを作れるのも含めて、色々な人に好感をもたれる才気ある人物なのだ。
つまり彼女につき従うようにしていけば、私自身もあの子と一緒にいる子という事で周りの好感度アップ!
しかも主人公に振られた彼氏の中で好みそうなのがいたら、慰めてゲームの中でも人生初の彼氏も手に入るかもという、緻密かつ大胆な策なのである。
というわけで、主人公である彼女と親友という名の少女もいるのだが、その親友の子と同じような位置にいさえすれば人生イージーモードで攻略可能……かも?
「あ、でも悪役がいないとこの攻略本は役に立たないんじゃ……」
なにしろヒロインの恋や努力を掠め取り、嫌な気分にさせる性格の悪い美少女なのだが、それがきっかけでヒロインの攻略可能男性キャラの好感度が上がるのである。
一応、恋愛ゲームなのでどの男性キャラを落とすのか逆ハーレムエンドかにしないといけないわけである。
バットエンドでも良いとも思われるかもしれないが、この攻略本いわく、バットエンドになると初めからとなり、時間がループするらしい。
何、その無限地獄……。
なのでまずはどのキャラから攻略させようかと思いつつ、最後の方にあったキャラの攻略難易度を確認する。
それによると接触しやすい家が隣同士の幼馴染少年が、好感度を上げやすいようだ。
何せ一緒に登下校するだけで好感度が上がるのである。
非常にくっつけるには楽で美味しいキャラだ。
だが、その幼馴染キャラには何か秘密があるらしい。
とはいえそこは大した問題ではない。
全ては私が平穏にこのゲーム生活を終えられるかどうかにかかっているのだ!
そう思いながら私は鞄に攻略本をしまい、ヒロインのいる教室の扉をくぐったのだった。