素晴らしい、乙女ゲームの世界
次は合同体育なので、ユーマと別れた後の私は女子更衣室に向かった。
体操着の入ったロッカーを、個別に充てられたロッカーの鍵で開ける。
少し早めに来たからか人は少ない。
着替えるには広くて良いわと思いながら、ロッカーの鍵を開けて体操着を取り出す。
ブルマだった。
何故これにしたと思いつつ、ショートパンツは無いか探したがなかった。
仕方がないとそれをはいてみると、ミントのスタイルが良いというか、足も白くきめ細やかな肌でほっそりとして長く、少なくとも大根足ではない足が映えるようだ。
これはこれでありね、露出狂じゃないけれどと私は思いながら機嫌良く上を着替える。
そこで私は衝撃の事実に気付いた。
「胸が、重くない……だと?」
そんな馬鹿なと思い、私は自分のそこそこ大きい胸に手を添えて持ち上げてみる。
……軽い。
今までこれよりも小ぶりだったが、ブラジャーをしてきつさを感じたりとか重くて机の上に載せてみたり肩こりとかたまに邪魔だと思ってきた私の胸が……軽い。
しかも形が整い、それこそ重力を無視したかのようになっていて肩こりすらない。
更に付け加えるなら、軽く持ち上げるとぽよんといく。
素晴らしい。
素晴らしい、乙女ゲームの世界。
私が涙を流しそうに感動しているとそこで、ローズマリーがやってきた。
私の二つ隣のロッカーが彼女のものだったらしい。
見落としていたわと私は自分のうかつさを呪いながらも、
「あ、ミントさん、もう着替えていたのですか?」
「あら、ローズマリー。カモミールは?」
「カモミールはミナトさんとお話があるらしくて」
「あの腹黒生徒会長と?」
腹黒生徒会長のミナトを思い出しながら、あいつらが話って……私の行動に関してかしら、と思う。
思いはするのだが、結局の所、このローズマリーとユーマをくっつけてその過程でローズマリーの友達になり人生イージーモードを目指す予定なのだ。
特に悪い事をするつもりはないので、調べられても全く問題ないわねと私はそれらを放置する事に決めた。
そこでローズマリーが私を見ているのに気づく。
「? どうしたの?」
「いえ、ミントさん、胸が大きくて良いなって。カモミールももっと大きいし……」
そう胸に手をあてるローズマリーは、確かに貧乳だ。なので私は、
「揉めば大きくなるらしいと聞いた事があるけれど」
「そ、そうなのですか! 早速やってみます!」
「私も折角だからやっておこうかしら」
大きくなっても肩がこらないしと思ったのだが、そこでローズマリーが、
「ミントさんは駄目です。これ以上大きくなったらずるいです!」
「……聞こえなかった事にして、こうしてこうしてと」
「あーう、ずるいですぅ!」
「うん、きーこーえーなーいー」
そんな事を話していると、カモミールがやってきて私達の様子を見て、
「何をやっているの貴方達」
「胸を揉むと大きくなるのに、ミントさんが自分の胸を揉んでいるんです!」
ローズマリーの必死の訴えにカモミールは、困ったような顔をしてから私を見て……あざ笑うように笑った。
その視線は私の胸に向いていて、
「私よりも小さいわね」
「胸の美しさに必要なのは、大きさではなく形だと思いますわ」
「負け惜しみでしょう? こんな風に大きな胸が貴方も欲しかったのかしら、ミントさん」
そうカモミールに言われて、別にこれぐらいの胸があれえば十分だと私は冷静になった。
その大きさに初対面の時に敵認識してしまったが、カモミールの大きさは、私にとって少し大きすぎる気がする。なので、
「……爆乳より、美乳よね」
「……ミント、喧嘩を売っているの?」
「大丈夫、男の人は胸が大きい方が好きらしいから!」
「何の話よ! というか何で胸の大きい私が貴方に慰められるのよ!」
カモミールは何かを言っていたが、私は納得したので特に気にならなかった。
そんなこんなで話している内に、私達は体操着に着替え終わったのだった。




