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泥船に乗ったような不安感が募るんだ

 食事の後、私はユーマに呼び出されていた。

 ローズマリーとカモミールとは別れ、ちょっと話が、と言われたのだ。

 ローズマリ―不安そうに私を見たので、うむ、ユーマに脈ありだわ~、と私はほのぼのしたので、


「何でかしら? ローズマリーの傍にいてあげた方がいいのではないかしら」

「……そうしたいのは山々だが、やっぱり俺はお前を信用できない!」


 指をさして私に宣言しやがったのだ。

 ローズマリーとの関係もあって、頃合いを見てユーマを呼んで今後の幾つかの話をするのが良いと思っていた私だが、なるほど。

 そちらがそういった風に言ってくるならば、私にも考えがある。


「私はそう言われてとても悲しいですわ。ですからその誤解を解くためにお話しさせていただきましょうか」


 にっこりとほほ笑む私。

 それをたまたま見た周りの男達と女性までも頬を赤らめる。

 さすがカリスマ的美貌を持つミント様、素晴らしいわと自画自賛しつつ、けれどその笑みにユーマが気圧されている。


 確かにミントは悪役ヒロインだが、その割にはこう、ユーマは私が苦手のようだ。

 やっぱり私が美少女だから? という部分よりかは、得体の知れなさが大きいのかもしれないと思う。

 もっとも侮られて制御を失う方が面倒なので、今のままで十分なのだが。

 それにこの状況も、私には都合がいい。

 伝えなければならない事があるから。

 そして屋上にやってきた私とユーマ。


「それで、この私に何の用かしら」


 悪役ヒロインぽく不敵な笑みを浮かべて問いかけてやれば、そこで初めてユーマは怒ったように私に、


「何でローズマリーにあんな事を聞くんだ!」

「別にいいじゃない。恋のお話は、女の子同士でよくある話よ?」

「いや、そうじゃなくて、わざわざ俺が好きだって知っているのに聞くなんて……」

「……分かってないわね。私はああ聞く事によって、貴方への好感度をローズマリーがどの程度持っているのか見ていたのよ!」

「な、なんだってー!」

「……冗談ではなく、本当に気付いていなかったの?」

「いや、だって俺……自分の事で精一杯というか、バレたらどうしようとか振られたらどうしようとか、気まずいとかこう……」


 延々とマイナス思考に入っていくユーマに、私は少し面倒くさくなりながらも、


「全く、(攻略本で)この全てを見通すような私が手を貸してあげるんだから、もっと大船に乗った気持ちでいなさい!」


 と励ましてあげる。

 けれどそれに不安そうにユーマが、


「……何となく泥船に乗ったような不安感が募るんだ」

「分かったわ、ローズマリーの逆ハーレムエンドのお手伝いをしてくるわ」

「やめてぇええええ、ごめんなさい、ミント様!」

「……まったく、どうしてそんなに自身がないのかしら」

「……だって俺、兄貴みたいに頭良くないし、スポーツくらいしか自信ないけれどそれも兄貴の方が……」

「? お兄さんがいるの?」


 そこでユーマが沈黙する。

 どうやら優秀な兄に対する劣等感があるらしい。

 彼には兄弟設定があったのかと思いつつ、ユーマが答えないのでそれ以上は深入りせずに、代わりに、


「それで次の合同体育の時間、新たな客ハーレム要因である男達との接触があるわ」

「! 何だって! 誰だ!」

「一人は、ヒュウガ・如月」

「! でもあいつは保健室でいつも……」

「けれど今日は、外で走る貴方達に憧れて出てきてしまうの。でも大丈夫、ローズマリーとの接点は私が阻止するわ」

「た、助かった。今日はローズマリーの傍に出来るだけいよう」

「そうして頂戴。そしてもう一人は接点がなければ、接触してこなくなるはず。そちらも私に任せて」

「……操られるのは癪だが、言われた通りにしないと失敗しそうだし……仕方がない」


 渋々頷くような彼に、この子も素直な子だなと私は思う。

 確率で分かるような詐欺に引っ掛かりはしないだろうかと、まだ一度しか私が言っている事が当たったのを目撃していない彼に、私は小さな不安を覚えたのだった。

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