和食と洋食のコラボ以上の奇妙な何かに
この謎な乙女ゲームの世界でも、お腹は空くらしい。
「食欲だけは仕方がないわね~。今日は何かしら。うーん、かき揚げうどんも美味しそう、カレーライスにサラダも良いかも。あ、カニクリームとコーンクリームコロッケ。美味しそう……。よし、うどんにしよう」
そのかき揚げうどんセットには、『特製、トロピカルジュース』が付いてくるらしい。
幾つもの甘酸っぱい果実にミルクを加えた南国のピンク色。
飾りとして、カスタードクリ―ムの入った鯛焼きとホイップクリームが載せられている。
和食と洋食のコラボ以上の奇妙な何かに見えるが、カスタードクリームの鯛焼きは大好きなので大した問題ではない。
それを購入し、ローズマリー達はどこかしらと探すと、
「ミントさん、こっちです!」
そう手を振るローズマリーに気付きそちらに向かう。
そこにはローズマリーとその隣に座るユーマ、ローズマリーの反対側に座るカモミールがいた。
なので私は、嫌な予感といった顔をしているカモミールの隣に私は座り、この四人全員が同じものを頼んでいると気付く。
やはりあのメニュー、というよりはこのジュースが気になるのだろう。と、
「こういった変なものは貴方、嫌いじゃなかったかしら」
「そう? 美味しければいいでしょう? それよりもうご飯食べていいかしら」
先ほどの空腹時の全力疾走は私にはきつかった。
覚えていなさいよ、モブモブ君(仮)と心の中で呟きながら、お箸を取り出し白いうどんをつまみあげる。
つるんとした感触に、カツオの風味が効いた出汁、それにかき揚げの旨みがほんのりする。
幸せ。
でもこの謎ジュースの味も気になるなと思いながら私は、口を付ける。
トロピカルな味がした。以上。
「それで、ローズマリーに聞きたいのだけれど良いかしら」
「何でしょう、ミントさん」
にこっと笑う彼女に私は、少し意地悪な笑みを浮かべて、
「ローズマリーはユーマが好きなのかしら?」
ユーマとローズマリーが同時に吹き出しかけた。
そしてカモミールが責めるように私に『ちょっと、ミント……』と言ってくる。
けれど私は無視してローズマリーを見ていると、ローズマリーは顔を赤くして、
「そ、そんなんじゃないです。ただ一緒にいる幼馴染と言うだけで、ただ、それだけで……」
段々と声が小さくなるローズマリー。
よし、やはり脈ありねと思いつつ今度は私はユーマにターゲットを絞り、
「ユーマ、ローズマリーが好き?」
「な、お前っ、べ、別のそんな……ただの幼馴染だし」
ユーマが顔を真っ赤にして慌てて答えている。
このユーマの様子でローズマリーが気付いてくれれば楽なのだが、どうも無理のようだ。
だってどっちも自分の事で精一杯のようだし。そこで、
「相変わらず、ミントは性格が悪いな」
「あら、生徒会長様、今日は生徒会の皆様とご一緒ですか?」
「そうだ。しかし人の恋路を気にするとは……赤い糸を切るつもりなのか?」
「別に二人がまだ恋人同士というわけではないでしょう。二人とも否定していますし」
にこっと笑いながら私は、この生徒会長であるミナトの足を踏みつけようとするがかわされる。
どうやら学習したらしい。
とはいえ、こうマイナスイメージを植え付けるような事を言わないで欲しいのだ。
ただでさえ悪役で友達になりましょうと近づいているというのに、これではとんだイメージダウンだ。
そもそもそれに対して私の言い分もある。
「そんな色恋なんてはたから見て面白いのを壊して、どうするんですか」
それにミナト達は黙り、そしてカモミールも息をのんだようだ。
あれ、私は何か間違えたかなと思っていると、
「……では、失礼する」
そう告げて、私の傍からミナト達は去っていったのだった。




