これは敵だわと
淡いピンク色の長い髪は下の方が巻かれている。
そして鋭い緑色の瞳。
お姉様キャラなローズマリーの親友である、カモミール・吉田だ。
そんな彼女は鬱陶しそうに私の車を見ているが、それを見つつ、そういえば彼女は私を嫌っている設定らしかったと思いだす。
そしてローズマリーととても仲が良かったはず……。
それならば彼女が私を嫌うのに特に不思議はない。
今までローズマリーに接触して彼女に会わなかったのは、昨日は彼女は風邪で休んでいたからだ。
それは私にとってもローズマリーに接触するには好都合であったわけなのだが……。
いずれ彼女とは一線を交えねばならないと分かっていたので、私は車を降り、
「ごきげんよう、カモミール・吉田」
「……貴方から私に声をかけてくるなんて珍しいわね、ミント様」
不機嫌そうに答えるカモミールが、自身の胸の下で腕を組む。
彼女の豊満な胸がぽよんと揺れる。
私の胸より大きい。
これは敵だわと思いながら、私は現在の事実を述べて彼女を挑発する事にした。
「私、ローズマリーのお友達になったの。だから、これからは貴方と仲良くしていきたいわ」
カモミールは黙った。
予想外の話だったらしく、目を見開くカモミール。
けれどすぐに私を睨みつけるように見て、
「貴方、何を考えているの?」
「私はローズマリーの人徳が気に入って、お友達になりたいと思った、それだけよ?」
ふふっと笑って見せる私だが、きっと彼女には暗黒微笑に見える事だろう。
私って、とっても不憫! と心の中でぶりっ子をしてみたが、気持ち悪いので考えるのを止めた。
そこで更に険悪な表情のカモミールが、
「友達? さんざん苛めておいて、私にも酷い事をしたのに?」
「……ところで私達、明日ローズマリーとユーマの二人と一緒に、私の家でお菓子作りをする事になったの」
話題を変えようと思い私は彼女にその話を振る。
それを聞けば、カモミールもやってくる事になるだろうと思ったのだ。
もちろん、これから長い付き合いになるであろう彼女とも仲よくしておこうという計算のもとだった。
そこで私は、顔を蒼白にしたカモミールに両肩を掴まれた。
「今、ローズマリーにお菓子を作らせる、と聞こえたのだけれど」
「? そうよ。彼女も望んでいるし」
「ねえ、貴方本気? 本気なの? やっぱりどこかで頭をぶつけたとか、そんなものがあるんじゃないの? いいから病院で検査してもらった方が良いわ。絶対におかしい、狂っている。正気とは思えないわ、止めなさい。そう、止め……」
「カモミール、酷いよ」
そこで私の降りた方と反対側からローズマリーとユーマが降りてきて、ローズマリーが怒ったようにカモミールに告げる。
「今度こそ絶対美味しいって言わせるんだから! あ、そうだ、カモミールも一緒に来てもらっていいかしら、ミントさん」
どうしてそんな話になったというように、更に顔を青くするカモミール。
私にはそちらの方が良かったので、
「そうね、では当日、カモミールのお宅に迎えに行きますわね」
「……ミント、ちょっと話があるのだけれど良いかしら」
「明日、一緒にお菓子作りをして頂けるのなら、少しくらいはかまわないわ」
それにカモミールは渋々頷く。
よし、これでカモミールもゲットー、と私が心の中で調子にのりかけた所で、新たなる見知った相手の声がする。
「……先ほどの一部始終を見ていたが、私も君には聞きたい事がある」
「あら、腹黒生徒会長のミナト様、今日はお早いのですね」
そう言いながらも私は、ローズマリーとのフラグを折る為に、
「ローズマリー、ユーマ、先に教室に行っていて」
そう、二人を教室に行かせ、フラグを幾つかへし折ったのだった。




