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破綻する予定表は作る意味があるのか

「こ、怖かった。拳銃か何かで撃たれるのかと思った……」


 怯えたように呟くユーマ。

 それを見ながら私も、もっともな庶民的反応だと思う。

 私だって同じような事をされたならそう思うに違いないと、私は車の後部座席に座りながら心の中で呟いた。


 現在私は、ローズマリーとユーマを迎え入れて、学校に向かっている最中だった。

 ローズマリーの家で少し待っていると彼女が家から出てきたので挨拶をして車に乗ってもらう。

 こんなにあっさり私を信じてしまう彼女に、素直で良い子だなーと私は思いながら、彼女にユーマがローズマリーの家に行き来する道を教わり、向かって行く。

 その途中で、ユーマがローズマリーの家に向かっているのを私達は見つけたのだ。

 そしてゆっくりと速度を落とし、歩いているユーマの横に止まる。


 はたから見れば、黒塗りで窓がマジックミラーになっている高級車が自分のすぐ横に止まり、窓を開けてくるという……馴染みのない何かが現れる、そんな恐怖を感じる光景だっただろう。

 もっとも中から私の顔が出てくれば、ユーマも何だお前か状態になる。

 ちなみに私は少しでもローズマリーとユーマの仲を縮めたいので、私とローズマリーに挟まれるように彼は座らさせられている。

 そこでユーマが、どうでもいい事に気付いたようだった。


「……ミント、髪からシャンプーのにおいがする」

「? そうなの?」

「うん、何時もローズマリーからする匂いと同じだし、間違いない」


 そういったユーマに私は、お風呂に入った記憶は無いなと首をかしげる。

 あのキ……時間が跳躍したあの時間の間に、私はお風呂に入った事にされているのだろうか。

 そういえば睡眠不足の感じもしないし、やはりあの飛ばされた時間にそれらが行われた事になっているらしい。


 便利というには便利だが、どうせお風呂に入るならこのスタイルを生かしたポーズを鏡の前でとっても良いのかもと私は思いつく。

 もちろんこの乙女ゲームは全年齢版なので湯気で色々な場所が隠れてしまうかもしれないが、この美貌といった美しくなった自分を楽しめるかもしれない。

 帰ったら早速やってみよう、でもその前に予定表でも作るか……いや、作っても予定外の事態で破綻するだろうな、でもゲームだから大丈夫かなと私が考えている所で、私は気づいた。


 ユーマとローズマリーの様子がおかしい。

 両方がというよりはローズマリーが怒っているようで、それにユーマが焦っているようだ。

 そこでローズマリーが頬を膨らませて呟く。


「……ユーマの、えっち」

「ち、違う! 健全な男子はこう、そういったものが気になってしまうお年頃というか何というか……」

「ミントさんはどう思います?」

  

 ローズマリーに話を振られて私は少し考えてから、ああ、先ほどの髪からシャンプーの匂いがという話か~、と私は思い出して、


「ユーマは意外にこう……むっつり?」

「むっつりって! 違う、そんなんじゃなくて、ただ意識してしまったとかそんな感じで……」


 私はいい訳をするユーマを放っておく事にした。

 必死でいい訳を繰り返すユーマに、ローズマリーがプイっとそっぽを向く。


「もう、しばらくユーマとは口をききません!」

「そ、そんな……。おい、ミント、手伝ってくれよ!」


 涙目なユーマに私は、自分が落としたい女で幼馴染なんだから、上手くご機嫌取りなさいよと深々と溜息をついて、


「ローズマリー、罰として明日お菓子作りをして、それを彼に試食してもらうのはどうかしら。もちろん私が作り方を貴方に教えるわ」

「あ、それは良いですね。ここの所ずっとユーマには逃げられていますし。それにミントさんに教えてもらえるなら、きっと普通なものが出来るでしょうし……よろしくお願いします」

「こちらこそ。……というわけで逃げるんじゃないわよ、ユーマ」


 そう私が念を押すと、ユーマがびくっと震える。

 やはり逃げる気だったらしい。

 全くこいつはと思っているとそこで車が止まり、ある人物が丁度私達の車の前を通り、高校に向かっていく所だったのだった。


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