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朝食のあとの

噴水の広場の後ろにあるレストランは、皆が朝ご飯を食べる場所らしく、サニエルさんと私が席に着くと続々とお客さんが入って来ていた。


「よお、フィリアちゃん早いなァ?」


「フィリアさんおはよ!昨日はよく眠れた?」


「フィリアさーんっ、今日もうやる事が終わってたらこの後うちに来ない?

新しい春物の服があるんだけど、良かったら着て欲しいのーっ!」


三人が同時に話すので、フィリアはおろおろとどれに先に返事をすればいいか迷っていた。


「おいお前等…一人ずつ話してやれよ、こいつの頭がパンクする。」


「だってよサニエルゥ~、朝っぱらからフィリアちゃんに会えたんだぜ?

これはもう口説くっきゃねえだろ?」


「アホかお前はどこまで頭腐らせてんだいっぺん切ってやろうか」


辛辣に返すサニエルの言葉には目もくれず、アルトとメロウは「こわいねぇ」、「おそろしいねぇ」とフィリアに話しかけていた。


「…あ、でもそう言えば、どうしてサニエルと一緒なの?フィリアさん」


「あ、それそれ私も聞きたかったー。」


「今日の朝からサニエルさんに牧場の事を教えて頂いてるの。

その後、サニエルさんがご飯行きましょうって言って下さったんです。」


フィリアの言葉に、この場にいたフィリアとサニエルの二人以外の声が止まった。

詳しく言うと、メロウ、アルト、ヒュディベルの三人が口を大きく開いたまま固まり、そしてブリキのおもちゃよろしくギギギッと首をサニエルの方へと向けた。


迷惑そうな表情で逃げ出そうとするサニエルを、ヒュディベルが腕を掴んで阻止した。


「……オイオイオイオイオイオイ。 今のほんとかよ、サニエル?」


「………ああ、そうだよチクショー。 悪かったかこんチクショーが。」


サニエルが本気半分冗談無しで睨みつけ、ヒュディベルはそれを受けてふるふると震えている。


「…アヴェル……アヴェルアヴェル赤飯赤飯赤飯!!!!!!!!!!」


「ああもうクソ黙れクソ髭野郎!!!!!!!!!!」



二人の声にアルトとメロウが「わあ!」と声を上げて、アヴェルの方はと言うと「みんな注文は?」とマイペースに返した。



季節ごとのメニューがオススメだとの事で、美味しいジャガイモを使った料理を注文する。

それぞれまた違った注文を受けつつ、アヴェルは笑顔で材料について熱烈に語った。


「いやあ、ジャガイモは良いよね。

一つのタネが沢山の芋を付けて帰ってくる。

僕も畑始めようかなあ」


「とか言って、今まで続いた事無いじゃない!」


「アヴェルは育てるより調理する方が合ってるよ」


くすくす笑うメロウとアルトに「まあ、そうだよねえ」と本人も認めているようで、調理に戻った。


「フィリアさんが出荷した野菜も楽しみにしてるね」


「はい!頑張りますね!」


自分が作った野菜が調理されて誰かに食べてもらえる未来を想像すると、思わず笑顔になってしまった。

それに皆さんが吊られるようにして笑い声が上がり、朝御飯の時間はとても楽しい時間になった。


今日はサニエルさんに教えてもらった事を復習しながら、畑の場所を確保するべくゴロゴロと土に埋もれた石を拾う作業に徹する。


使えそうな大きさの岩はハンマーで叩きながら、少しずつ土が見えてきて、気が付けばもうお昼を回っていた。


全体を見渡すとまだまだだが、今日1日かけてなるべく早く畑を耕しておきたいので、お昼ご飯を後回しに、私はハンマーとクワを振るう。



このワカバタウンは、再出発の街だと人伝に聞いた。

私の生まれは大きな国の中心地で、人と人とがごった返す雑多な場所。

常に上と下があって、精神を蝕む言葉を吐き出す人間の様な何かが居る場所。

そんな場所から逃げたくて、ただ逃げたくて。

私は逃げ出すための勉強を始めた。

周りの吐き出す言葉は「将来の為」「国の為」「家の為」と、人生の全てをかけて挑むのだと、よく分からないまま首を傾げて生きて来た。

私とあの場所は違うのだと、はっきりと決別して、私はこのワカバタウンへとやって来たのだ。


逃げた先がこんなに優しくて暖かい場所だとは思っていなかったけれど、嬉しい誤算だと思った。

肩の力を抜くのはまだ難しいけれど、教えてもらえた事をしっかり復習して、私の、私だけの場所を確保する。

そんな事ばかり考えていると、目の端でキラリと何かが光った気がした。

それはどんどん視界を覆い隠し、眩しい光はそのまま真っ白な世界に早変わりした。

何が起きたんだろう?まだ空は晴れたままで、青空が広がっているはず。

それなのに、自分の視線の先は全て真っ白、気付けば頭が割れるように痛い。

その場に座り込んで目を閉じるが、なぜだか真っ白なままで、怖くなって来た。

今までこんな事無かったのに、私は死ぬんだろうか。

そう思うと怖い気持ちは急増して行って、どんどんと脈拍が早くなる。


「……フィリア?」


声がして、しかし反応するにもどちらを向けば良いのかが分からなくてその場に座ったままだ。

すると声の主が近付いて来て私をゆっくり抱き上げた。


「ひとまず家に入るぞ」


「……サニエルさん」


「無理して喋んな、顔真っ青だぞ」


怒ったような声音に何も言えなくなって、私は頷いてそのまま身を任せた。

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