異世界召喚~豆腐勇者~
魔族に侵された人間達が最後の希望としてすがりついたのは
『異世界』の勇者だった
そんなの、俺は嫌だったが
国は、世界はそれを望み喚んだ
俺だって魔王を倒して世界を救いたいのに…!!
そんな反勇者派の俺は、皮肉にもただ一人の勇者の仲間に選ばれた
少数精鋭にも程があるが、国にはそこまで勇者に分け与える武力が無かったから致し方ない
だが、
『勇者はすらいむを倒した』
『勇者は1の経験値を手に入れた』
『勇者は心に2の傷を負った』
『勇者のMGが無くなったので勇者は病気になり倒れた』
「頭が……くらくらする…」
そう言い、スライムを五体ほど倒してこの女勇者が倒れるのは二回目だ
華奢な彼女の上には
完全回復済みのHPゲージと
完全回復済みのMPゲージと
残量0になったMGがあった
「っ、勇者お前メンタル弱すぎだろ!!!」
『異世界からの召喚〜豆腐勇者〜』
「申し訳ありません……戦士さん」
「まさか初日で四回も教会に駆け込むはめになるとは思わなかったぜ」
ううう、と唸る勇者の頭に絞った手ぬぐいを置きながらため息をつく
戦闘→MG切れ→教会のコンボを四回やり、勇者のレベルはなんとか3になった
だがレベルがあがりHPは上がってもMGは上がらなかった
しかもだ!!しかもこいつのMGは
自分で倒す→2減る
俺が倒す→1減りやがった
つまりモンスターに出会ったら、攻撃をくらいHPを犠牲にしながら逃げるか
倒して勇者のMGか減るのどちらかしかなかった
どちらにしても早期教会パターンだくそが
「生き物が死ぬのを見るのはどうも駄目で……」
「お前、今までなに食って生きてきた」
「何度も倒れるうちに母が何が何だかわからない見た目で出してくれるようになりました」
「もうだめだ」
はあああ、とため息をつきながら頭を抱える
いっそのこと城に戻るか
いや、あんだけ盛大な式典をやられた手前帰れない。だがしかしこのままでは貰った支度金もモンスターを討伐して得た金も全て教会に寄付するはめになる
どうしたものかと、頭を抱えたとき
「……もう駄目でごめんなさい…」
『勇者は心に1の傷を負った』
「おま、討伐以外でも傷を負うのかよ!!」
せっかく回復してきたMGがまた減った
「本当にごめんなさい…」
『勇者は心に1の傷をおった…』
「あーあーあー、もう俺がなんとかしてやるから気にするな、な?」
しかもアナウンスも何だか悲壮染みてきて、もうやけくそ気分にすらなってくる
ぴかーんぴかーんと点滅しヤバい状態を表すMG
内心、こいつどんだけ豆腐メンタルなんだよ!!と突っ込みながら
もう何故か泣きそうになりながら、泣きそうな勇者を慰めた
「とりあえず、近くのイブリィス村に幼なじみの魔法使いがいるからそいつを仲間にしようぜ。イブリィス村まで頑張って行こうな?」
「……はい」
「あんたいつからそういう趣味に目覚めたの」
「ちげぇよ!!!」
久しぶりにあった幼なじみの毒舌は変わってなかった。だが事情を説明するのは少しだけ待ってほしい
こちとら、片道三時間の道を再スタートに次ぐ再スタートで10日かけてきたんだ…!!
俺のとなりには、目隠しと耳せんを着けて首輪にリードの犬もとい勇者
言っておくが彼女のこんな状況はやむをえずだ!!!
道中MGが切れて街に戻ることを繰り返し、彼女のレベルが5になった時
悲劇は起こった
『勇者のメンタルレベルが下がった』
『MGゲージが1減った』
「はぁぁあああああっ!?」
とまぁ、こんな感じにメンタルレベルが落ちたのだ
かなりレベルが上がりやすい1→5の間で落ちると言うことは、本体のレベルが15あたりになるときには0になるんじゃないか……
そう考えた俺は、勇者に目隠しをして俺がモンスターを倒すことにした
だかしかし
『戦士は魔物の群れを倒した』
『みんなは4の経験値を手に入れた』
『勇者は心に3の傷を負った』
「ちょっとまてえええええ!?なんで今のでダメージくらってるんだよ!!」
「見え無い分想像が働いて……」
想像力豊かだな!!ちくしょう!!
…………とまぁ、こんな理由が他にも色々と追加されて彼女はまるで拘束される罪人のような状況になった
とりあえず、移動中に見かけた腐った死体でもMGは下がった
「はぁ?何それ?ゆーしゃさまのくせになっさけないわねぇ」
「馬鹿、やめっ!!」
事情を説明しながら勇者の拘束を外し
幼なじみの家で文句を言われながらも茶をもらいほっと一息……つく間も無かった
『勇者は心に1の傷を負った』
『勇者のMGが無くなったので勇者は病気になり倒れた』
「ごめ……なさ……」
魔法使いの毒舌で、かろうじて保っていた最後のライフを削られた勇者は
最悪にも教会が無いこの村で倒れて
…………回復をしたのはそれから三日後だった
「あんたが情けないから力を貸してあげるだけなんだからね!!べ、別にあんたを気に入ったとかじゃないんだから!!」
「ありがとうございます。ツンデレさんなんですねぇ」
「ツンデレ?なによそれ」
「ツンツンしてるのに凄く優しいことです」
「ばっ、な、なななな、何言ってるのよ!!!」
文句を言いながらも仲間になってくれた魔法使い
また勇者のMGが減るんじゃないかとヒヤヒヤしていたが、前を歩く二人は意外にも仲良く話ながら歩いて──『魔物の群れが現れた』
サッ、ギュッ、キュポッ
「援護を頼む、魔法使い」
「……それよりあんたの目隠しと耳せんを装着させる早さが気になるわ」
「なんのために俺が後ろを歩いていたと思ってるんだ」
「………そのためだったのね」
「一度後ろを向いて着けていたら背後から魔物に襲われたからな」
「当たり前じゃない」
軽口を叩きながらも、ばさばさと魔物を倒し合う俺と魔法使い(勇者は大人しく座ってる)
背中を任せられる相手がいることに少なからず感動をしながら俺達は魔物の群れを問題なく倒した
「じゃあ行こうか」
「ちょっと待ちなさい。勇者の目隠しとか取ってあげなさいよ。なんで首輪に紐を繋いでるのよ」
「だが、また腐った死体とか放置してあったらどうする?あれは見ただけでもごそっと勇者のMGが減るぞ」
「だからと言ってその扱いは人権損害よ」
「大丈夫、合意の元だ」
「っ、とにかく止めなさいよ!!私までSMプレイの仲間に見られたらどうするのよ!!」
勇者を気遣う文句に見せて、最終的には自分の都合を押し付けて来た魔法使いにやれやれとため息をつき
仕方がないから勇者の完全武装を解除してやる
「あれ?とってもいいんですか?」
「魔法使いがどうしても、だそうだ」
「魔法使いさん、ありがとうございます」
ほわほわと回りの空気まで柔らかくなる勇者の微笑みは非常に好ましい。だが彼女は全く持って、勇者向きではない
どちらかと言うと、家庭に入るタイプだ……
そこまで考えて、何故か脳内で俺の家で食事を作り出迎えてくれる彼女が想像され慌てて掻き消す
べ、別にそんなの望んでねぇ!!
「なにしてるのよ不審者」
「う、うるせぇ!!」
────果たして、勇者一行の旅路の結末は如何に。