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忠犬のような彼女

作者: 広瀬六


彼女を動物に例えると、犬だ。

彼女の短いショートヘアーと、どこまでもついてくる人懐っこさからはやはり犬の毛を感じられる。

特に冬場にレッグウォーマーをつけて、

駅中などをてくてく歩く姿に、身がもだえてしまうほどの可愛らしさがあふれる。


だが、夏場のタンクトップから無防備にのぞかせる胸元もいい。

しかも素直かつ従順で、「ありがとう」「ごめんなさい」がしつこくなくよく言える。


基本的に人を疑ったりしない。その琥珀色の瞳は、いつもいつもまっすぐなままだ。

料理もうまいほうではないけれど一生懸命に頑張る。

地味なエプロンに身を包んだ姿は実にいとおしい。


キッチンに経っている彼女に抱きついたりキスしたりすると顔を真っ赤にして、

「集中できません」 と言いながら身をくねらす姿を見ると、今すぐにでも抱きしめて、だっこして、その後は強引に。

どんなに激しくしても、彼女は「いやです」も「やめてください」は言わない。


先程は、強引にも頭をつかんでまあ色々としてしまったが、それでもけなげな笑顔を見せられると、

そっと頭をなででしまう。

その純粋さにやられ、サディスト的な感情も保てなくなってしまう。


犬のように利口な彼女は、猫みたいに気まぐれににげたりしないし、泥棒もしたりしない。


犬のように純粋な彼女は、うさぎみたいにさみしくて死なないし、信じてやっていれば必ず待っていてくれるし、

同じ小屋に入ったからって、他の男と簡単に関係を持ったりしない。


彼女は俺にとって「絶対無二」の存在だ。


こんな風に思っている今も、ゲームコントローラーを持ちながらテレビに向かっている俺の背中に、

ぴとっと自分の背中をくっつけて、喜んでいる。


そんな犬のような彼女を眺めて、触れている何でもない時間がなんだかいとおしい。

都会やオフィスの喧騒から逃げ出して、彼女と過ごす甘ったるいひと時が好きだ。


明日もきっと、彼女は俺の勤め先の駅まで迎えに来てくれるだろう。

俺の分のブラックコーヒーの缶右手に、そして自分の分の甘くて砂糖いっぱいのココアを左手に。

そして、俺を前にするとてふてふと尻尾を振って、喜んで抱きついてくるだろう。




「うん、ただいま。ゆりあ」




だけれどすぐ道に迷ってしまうので、

自分の汗の匂いも覚えさせて、首輪もしっかりはめないと、

彼女は悪い男にだまされてしまう。

この世間知らずさが、こんなにも俺の独占欲を掻き立てられる、かわいい、かわいい、彼女なのだ。


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