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第3話:思い出

外の風はずいぶんと冷たく、酒でほてった体を冷やした。

タバコを買おうと自販機に近づくと、その横に古びたジュースの自販機が置いてあった。

ココアの茶色い缶が僕を十年前にトリップさせた。

そう、あれは僕らがまだ高校生だったあの日

12月31日

年末も年末だったのに、その日はなぜか補習があって、しかも最悪なことに夕方の六時からだった。

当然、帰りは九時とか十時。

今思い出しても、なんであんなばかげた補習があったのか腹がたつけど。

「間瀬くん」

近道をしようと公園を横切っていた僕に話かけてきたのはカナだった。

その頃のカナは髪が長くて、男子の間じゃあマドンナなんて言われてた。

「あれ、南野どうかした?」

カナはずいぶんあわてて走ってきたのか、息はあがっていたし綺麗な白い肌はほんのり赤く染まっていた。

僕は少しドキドキして、マフラーを巻き直した。

「ありがとう」

ベンチに座ったカナに、買ってきたココアを渡した。

プルタブをひねるとココアの甘い匂いが漂う。

「あたしねぇ、間瀬くんに話があるんだけどね―」

「そういやさぁ、今日の補習どうだった」

その時、いまでもよくわからないけど僕は話を替えた。

それから僕らは適当な話をした。

ココアはとうの昔に冷たくなってしまったのにカナが大事そうに飲んでいたのを覚えてる。

「そろそろ新年始まるよ。帰ろうか」

僕が立ち上がろうとするとカナが僕のマフラーをつかんだ。

苦笑いで振り向くとカナがふくれて僕を見上げていた。

「話」

そう言うカナの首元に、僕のマフラーを巻いた。

「寒いんだろ」

「うん」

一瞬驚いた顔したカナだったけどうれしそうに笑って僕に抱きついてきた。

「寒」

でてきたココアを両手で包んだ。

じんわりした暖かさが伝わってきて少し、何かを思い出した気がした。

「トオル」

後ろから声をかけられてびくつきながら振り向くとカナが、頬を赤く染めて立っていた。

僕は落ち着かずにマフラーを巻き直した。

「トオル、あたし―」

カナの手をとってココアを握らせた。カナの目が丸くなる。

「寒いんだろ」

マフラーを巻いてあげるとカナはうなずいただけだったけど、僕に抱きついてきた。僕もやんわりと抱きかえした。

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